こんにちは。新規事業の開発や既存業務の効率化などに使える補助金・助成金の無料診断 / 申請支援を行う『補助金サポート』を提供しているクラウド軍師運営チームです。
近年、中小企業に向けた補助金制度が拡充されつつあります。
その一つが、事業再構築補助金です。
この補助金は、ポストコロナ・ウィズコロナ時代における社会変化に対応すべく、挑戦を行う中小企業をサポートする制度です。新分野展開や事業転換、業種転換、業態転換、事業再編を行う企業にとって、この制度は大きな助けとなるでしょう。
この制度の詳細は「事業再構築補助金とは?申請枠ごとに要件・補助額をわかりやすく解説」をご一読ください。
また、補助金の効果をしっかり得るには、事業再構築補助金が圧縮記帳の対象となることも理解しておく必要があります。
では、これはどのような措置なのでしょうか。
今回は、圧縮記帳についてわかりやすくご紹介します。
圧縮記帳とは
圧縮記帳とは、補助金の効果を高めるため、補助金を受け取った年の課税負担を一時的に減らす措置です。
実は、補助金や助成金は非課税ではありません。これらは「益金」とされ、その事業年度の法人税上の課税所得の対象となります。
しかし、受け取った補助金のせいでその年の課税所得が大きく増えれば、支払う税金の金額も増え、せっかくの補助金の効果は減少してしまうでしょう。
この対策となるのが、圧縮記帳です。
圧縮記帳は、補助金・助成金による利益を当年に認識せず、翌年以降に先延ばしすることによって、補助金・助成金の効果低下を防ぐ措置。
具体的には、補助金の額を益金として計上せずに、補助金を使って購入した固定資産の取得価額から受け取った補助金の額を引きます。これにより、所得から補助金の利益を除き、初年度の課税額を抑えます。
ただし、この処理によってその後の減価償却費は減額となることから、初年度以降のトータルの税額は変わりません。
つまり、圧縮記帳を行なっても、総合的に見ると所得および課税額は同じ。これはあくまで、課税を先延ばしにする手段だと考えてください。
事業再構築補助金には圧縮記帳が認められる
「事業再構築補助金は圧縮記帳できるのかどうか」は、事業者の間で疑問視されてきました。なぜなら、圧縮記帳の対象は、国や自治体が直接交付する補助金・助成金とされているからです。
事業再構築補助金は、独立行政法人中小企業基盤整備機構経由で交付されます。よって、この要件に当てはまらないのではないかという見方が生まれていました。
これを受け、補助金を運用する独立行政法人中小企業基盤整備機構が令和3年8月11日に発表したのが、次の回答です。
その結果、今般、本補助金については、所得税法第42条又は法人税法第42条に規定する国庫補助金等に該当し、本補助金のうち固定資産の取得に充てるための補助金については、圧縮記帳等の適用が認められる旨の回答を受領致しましたので、ご案内申し上げます。
※本補助金のうち、技術導入費、専門家経費等の固定資産の取得以外に充てられた部分の金額については、所得税法第42条又は法人税法第42条の規定の対象外のため、圧縮記帳等の適用は認められませんので、ご注意願います。参照:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業等事業再構築促進補助金における圧縮記帳等の適用について」
この発表により、事業再構築補助金は圧縮記帳の対象となることが確実になりました。ただし、回答にあるとおり、固定資産の購入以外のことに使われた金額は、この適用とはならないので注意しましょう。
圧縮記帳が認められる経費は「固定資産」のみ
前述のとおり、圧縮記帳は補助金・助成金を受け取った事業年度の課税抑制に効果的です。
ただし、この措置がどんな経費にも認められるわけではない点には注意が必要です。
圧縮記帳が適用できる経費と適用できない経費は、次のとおりです。
【適用できる経費】
- 固定資産の購入
【適用できない経費】
- 固定資産の購入以外の経費
上記のとおり、圧縮記帳が適用されるのは、固定資産の購入のみ。それ以外の経費には、この措置は適用されません。
よって、補助金・助成金を固定資産の購入のために使わない場合には、圧縮記帳ができず、それらを受け取った事業年度の課税が大きくなることがあるため、注意が必要です。
圧縮記帳のメリットとデメリット
圧縮記帳には、メリットだけでなく、デメリットも存在します。措置を適用する際には、これらを正しく把握しておくことが大切です。
ここでは、圧縮記帳のメリットとデメリットを整理しておきましょう。
圧縮記帳のメリット
ここまでにもご紹介したとおり、圧縮記帳では、補助金や助成金を受け取った年の課税所得を減らし、一時的に支払う税額を減らすことができます。最終的に支払う税額は、圧縮記帳をしない場合と同じになるものの、課税を先送りにすることで、事業者は補助金や助成金の効果を高めることが可能です。
これが、圧縮記帳を行うメリットであり、主な目的です。
圧縮記帳のデメリット
圧縮記帳のデメリットとしては、管理作業の負担増加が挙げられます。圧縮記帳資産は、他の資産と区別して管理しなければならないためです。
また、圧縮記帳を適用している固定資産を途中で売却した場合には、圧縮記帳による取得価額の減額のせいで、売却益が大きくなることがあります。そうなれば、課税所得も多くなり、事業者が支払う税額は高くなるでしょう。
圧縮記帳を行う際の注意点
最後に、圧縮記帳を行う際の注意点を2つご紹介します。
圧縮記帳の実施にあたっては、必ずこの2点を意識し、処理を進めるようにしましょう。
欠損金繰越の考慮事項
圧縮記帳にあたってまず気をつけたいのが、欠損金の繰越について。
欠損金とは、いわゆる赤字のこと。欠損金には繰越控除制度があり、欠損が発生してから10年以内であれば、当期の所得金額の50%を限度に、その欠損金を損益として計上できます。ただし、10年を過ぎると、この控除は適用されません。
よって、欠損金の繰越を行なっている場合には、圧縮記帳によって、期限内に控除できない欠損金が出ないよう、気をつけなければなりません。
圧縮記帳の適用にあたっては、必ず欠損金についても考慮するようにしましょう。
税額控除制度との調整
各種税額控除制度を利用する場合の圧縮記帳についても、事業者は気をつける必要があります。税額控除と圧縮記帳を併用する際に、控除限度額が低くなってしまう恐れがあるためです。
圧縮記帳は課税を先延ばしするもので、税額控除は支払う税額を減らすもの。これらの制度を併用する場合には、最大の利益を得られるよう、うまく調整を行わなければなりません。
そのためには、「受け取った補助金・助成金のうち、どれだけの金額を圧縮記帳の対象とするか」をよく検討することが重要です。ただし、「今年は補助金の半分、来年に残りの半分」というように、複数年にかけて圧縮記帳をすることはできません。
まとめ
事業再構築補助金は、社会変化に対応しながら挑戦を行う中小企業を支援する制度であり、圧縮記帳の対象となります。
圧縮記帳とは、補助金を受け取った事業年度の課税所得を減らし、課税を先延ばしする制度のこと。これを利用することで、事業者は十分な補助金の効果を得られます。
補助金や助成金を受け取った中小企業は、この制度の利用を検討しましょう。
ただし、制度の利用にあたっては、管理負担や売却時の課税増等のデメリットも理解し、欠損金や各種税額控除制度との調整も行わなければなりません。
税制にはさまざまなものがありますが、それぞれを調整しながら、事業者にとってもっとも利益となる方法を適用するようにしてください。