こんにちは。新規事業の開発や既存業務の効率化などに使える補助金・助成金の無料診断 / 申請支援を行う『補助金サポート』を提供しているクラウド軍師運営チームです。

ものづくり補助金は、相次ぐ制度変化に対応するため、革新的なサービス・商品開発や生産プロセスの改善に取り組む中小企業を支援するための制度です。
この補助金は製造業での採択率の高さが特徴ですが、それ以外の業種、例えば飲食店でも採択された事例は存在します。

では、採択された飲食店は、どのように補助金を活用したのでしょうか。また、この制度では具体的にどのような経費が補助の対象となるのでしょうか。

今回は、ものづくり補助金における飲食店の取り組み事例と補助対象、採択のポイントについて、詳しく解説します。

【ものづくり補助金】飲食店が採択された事例

まずは、ものづくり補助金に申請し採択された飲食店事業者の事例を6つご紹介します。

【事例①】有限会社嬉乃すし|最先端冷凍技術によるお寿司の製造

佐賀県ですし店を営む有限会社嬉乃すしでは、「最先端冷凍技術による高品質佐賀牛のお寿司の製造」を実現するために、ものづくり補助金を活用しました。

同社では、仕入れ・製造から時間が経つことによる食材の品質低下を課題としていました。
そしてこれを解決するため、ものづくり補助金を活用し、新たな冷凍技術「プロトン凍結機」の導入を決定。肉や魚を高鮮度で保存することはもちろん、ふっくらしたシャリの長期保存にも成功しました。

その結果、同社は課題を解決し、次の成果を得ています。

  • 旬の時期に安く仕入れた食材を保存することで原価を抑制
  • 時期を限定せず、安定したネタの供給が可能に
  • 仕込みのタイミングが制限されないため、受注点数を制限せずに済み、従業員を残業させる必要もなくなった

大きな成果を得た有限会社嬉乃すしでは、冷凍寿司による全国・世界を視野に、商圏拡大を検討しています。

【事例②】有限会社国分寺そば|手打ち十割そばの提供と技術伝承

神奈川県でそば店を経営する有限会社国分寺そばは、「独自ノウハウによりそば粉から一貫製造する、本格手打ち十割そばの提供と技術伝承」において、ものづくり補助金を活用しました。

同社では、代表の娘に対する事業継承を予定していましたが、そば作りには重労働が必要であり時間もかかるため、業務の省力化・効率化が喫緊の課題でした。また、顧客を待たせることも多いことから、製造量を増加させる必要もありました。

そして、この課題を解決するために、補助金を活用して行ったのが、製麺設備のメーカーとの共同開発と持ち帰り用そばの真空パック化です。

その結果、同社は課題を解決し、次の成果を得ています。

  • 事業継承に伴い女性でも無理なく作業ができるようになった
  • 麺の製造量を増やすことができた
  • 土産用そばを真空包装にしたことで効率的なテイクアウトが可能になった

特に土産用そばは顧客から好評で、コロナ禍におけるテイクアウト需要にも対応できたといいます。

【事例③】株式会社よしむら|国産そば茶スイーツの小売事業展開

京都府で手打ちそばなどの飲食店を経営する株式会社よしむらでは、「自家焙煎方式の開発による、国産そば茶スイーツの小売事業展開とブランドの確立」において、ものづくり補助金を活用しました。

同社はターゲットを拡大するため、そばスイーツの開発を計画していました。しかし、この計画には「そば茶の自家焙煎の開発」「高品質なスイーツの製造・生産能力」「賞味期限の短さ」などの課題が。
同社ではこれを解決するために補助金を活用したプロジェクトを実施。「独自焙煎機の開発」「生産拠点の集約と機器の導入」「急速冷凍・保管の実現」によって課題を解決し、次の成果を実現しました。

  • 満足のいくそばスイーツが完成
  • 品質を落とさない長期間の保存も実現
  • 小売事業の展開が可能に

同社では、スイーツブランドを立ち上げ、今後のより幅広い商品展開を目指しています。

【事例④】有限会社オハラ|ドライブスルーでのコーヒーバックの提供

徳島県でコーヒー店を経営する有限会社オハラでは、「パーキングドライブスルー方式によるネル式ドリップコーヒーパックの提供」において、ものづくり補助金を活用しました。

同社では、コンビニやチェーン店の増加におけるコーヒー店間の競争激化に伴い、差別化の必要性を感じていました。
そこで、コロナ禍のテイクアウト需要も踏まえ、新たな消費動向に対応しようと、補助金を活用し、オリジナルドリップコーヒーパックのドライブスルーによる提供を計画。その過程で自動化を推進しながら、効率的かつ高品質なコーヒーパックの製造に成功しました。また同時に、キャッシュレスやモバイルオーダーに対応したドライブスルーシステムも構築し、次の成果に辿りつきました。

  • 鮮度の良さ、小ロット多品種での展開実現による商品価値の向上
  • オーダー数の増加

同社は今後も設備を増やし、顧客ニーズに合ったコーヒーを展開していく予定です。

【事例⑤】さわのや|急速冷凍じゅーしぃおにぎりの増産体制構築

沖縄県の飲食店であるさわのやでは、「新機械導入による急速冷凍じゅーしぃおにぎりの増産体制構築」において、ものづくり補助金を活用しました。

同社では、沖縄県の名物であるじゅーしぃのおにぎりを急速冷凍という形で生産していますが、その過程における一部手作業による生産の非効率により製造量が制限され、多くの販売機会を逃していました。
そこで、ものづくり補助金を活用し、機械化を推進。製品の生産性向上に成功し、次の成果を上げました。

  • 生産効率が約15倍に
  • 製造ロスは0に
  • 従業員の負担軽減

効率的な生産の実現により、同社は生産数を向上させ、また労働環境の向上も実現しています。

【事例⑥】株式会社 かめいあんじゅ|漬物の生産と「大和当帰」を使った新製品開発

大阪でレストランやコンサルタント会社を経営する株式会社かめいあんじゅでは、「漬物の生産と大和当帰を使った新製品開発」において、ものづくり補助金を活用しました。

同社では、生産性の高い事業展開を目指し、奈良県の野菜を用いた漬物の開発を実施。食感と衛生を重要視して、それを実現できる設備を、補助金を活用して導入しました。
その結果、多様な漬物を開発することができ、伝統野菜「大和当帰」の漬物も誕生。次のような成果を得ています。

  • 生産量向上や付加価値化
  • 関係企業への対応ノウハウの構築
  • 近畿から東京まで販路を拡大
  • メーカーとしての活躍

同社では、今後も伝統野菜を使った漬物の開発に力を入れ、地域貢献も担っていく予定です。

飲食店がものづくり補助金を活用できる対象経費とは

飲食店がものづくり補助金を活用できる対象経費には、次のようなものがあります。

【対象経費①】機械装置・システム構築費

機械装置・システム構築費とは、事業計画の実現に必要な機械やシステムなどの導入にかかる費用のこと。前章の事例でいえば、凍結機や製麺機、ドライブスルーシステムの導入にかかる費用などが該当します。

機械装置やシステム構築には多額の費用がかかりますが、補助金を活用すれば、飲食店の負担は軽減し、機械・システム導入による業務改善を進めやすくなります。

【対象経費②】専門家経費

専門家経費とは、事業計画の策定・実施において技術指導や助言を依頼した専門家に支払う金銭のこと。専門家によるコンサルティング業務や旅費の経費は、ものづくり補助金の補助対象です。

その上限は、1日につき5万円または4万円。ただし、この経費については依頼に対する報酬の妥当性を証明できるよう、複数の見積書が必要になります。
また、旅費についても細かな規定があるので、公募要領の記載をよく確認しておくようにしましょう。

【対象経費③】外注費

事業計画の実施にあたって、外部の企業にデザインや設計、検査などを外注した場合の費用も、ものづくり補助金の補助対象です。

ただし、外注費については経費の2分の1が上限で、専門家経費同様細かな規定が設定されています。利用にあたっては、必ず公募要領を確認するようにしてください。

その他対象経費

ものづくり補助金では、上記以外に次の経費も補助対象となります。

  • 技術導入費
  • 原材料費
  • 運搬費
  • クラウドサービス利用費
  • 知的財産権等関連経費

また一方で、不動産や車両の取得は補助対象外と定められています。例えば、新しく飲食店を開くための土地や出前のための車両の取得には、ものづくり補助金は適用できません。
さらに、事業外で使用できる物の取得、対象期間外の経費などについてもものづくり補助金の対象外となります。

2024年実施のものづくり補助金17次公募の詳細については「ものづくり補助金とは?17次公募の最新情報や概要をわかりやすく解説」でご説明しています。

飲食店がものづくり補助金で採択されるための2つのポイント

飲食店がものづくり補助金の採択を受けるためには、事業計画策定にあたって、次の2点を意識するようにしましょう。

【ポイント①】新商品・新生産体制の確立

飲食店の場合、新商品の開発や業務における新体制の確立において、事業計画を策定しものづくり補助金への申請を行うことが多いです。

新商品を開発する場合であれば、まずは現状の課題と目標を設定し、独自の強みを生かしたり他店とのコラボレーションも検討したりして、課題を解決できる綿密な開発プランを練りましょう。
そして事業計画においては、その実現可能性の高さをアピールしていくことが大切です。

また、機器・システムの導入による新生産体制の構築に補助金を活用する場合には、その成果を明確な数値で示すようにしましょう。例えば、「製造量が1.5倍になる」「機械化で人件費を20%抑えることができる」など。
具体的な数値の提示は、その費用対効果の高さのアピールに役立ちます。

【ポイント②】今までにない革新的な開発

新商品を開発する場合でも新体制を構築する場合でも重要なのが、プランの革新性です。
ものづくり補助金は中小企業の「革新的な取り組み」に対して支給されるもの。多くの飲食店が行っているようなプランでは、革新性は認められず、採択の可能性が低くなってしまう恐れがあります。

事業計画は、まず自社に合った内容で策定することが大切ですが、他社との差別化についても意識しておくようにしましょう。

また、補助金の採択率を上げるには、過去の採択の傾向を把握しておくことも効果的です。ものづくり補助金の採択率の推移については「ものづくり補助金|過去の採択率の推移とその傾向を解説」をご一読ください。

まとめ

ものづくり補助金は、飲食店の商品開発や生産体制確立を費用面で支援します。
しかし、その採択を受けるためには、事業者は費用対効果や実現可能性が高い事業計画を策定しなければなりません。現に、今回ご紹介した事例では、どの飲食店もオリジナリティの高い計画を策定し、成功を収めています。
補助金申請にあたっては、自社の課題をオリジナリティある方法で解決するような計画を策定するようにしましょう。