こんにちは。新規事業の開発や既存業務の効率化などに使える補助金・助成金の無料診断 / 申請支援を行う『補助金サポート』を提供しているクラウド軍師運営チームです。

中小企業や小規模事業者に向けた制度に、ものづくり補助金があります。
この補助金は、近年続く制度変更に対応するため、革新的なサービス・製品開発や生産プロセス改善に取り組む事業者を支援するもの。補助金の取り組みを進めることで、事業者は市場における競争力強化を目指すことが可能です。

そんなものづくり補助金に申請するための重要な要件のひとつが、「賃上げ要件」
今回はこの賃上げ要件について、採択の重要なポイントとなる加点制度とともに詳しく解説します。

賃上げはものづくり補助金申請において必須要件

ものづくり補助金の申請を行うには、事業者は規定の要件を満たす必要があります。要件を満たせない事業者は補助の対象にはならず、一旦補助金を受け取ったとしても、その後返還しなければなりません。

その要件のひとつが、「賃上げ」です。ものづくり補助金には賃上げに関する要件が複数定められていて、事業者は賃上げを実行しなければなりません。
つまり、要件に定められた賃上げを実現できる見込みがある場合のみ、事業者はものづくり補助金を申請することができるのです。

また、賃上げ以外に「付加価値額の増加」も、基本要件には含まれます。

ものづくり補助金の概要や最新情報については「ものづくり補助金とは?17次公募の最新情報や概要をわかりやすく解説」で詳しく解説していますのでご一読ください。

ものづくり補助金の賃上げ要件

ここからは、具体的な賃上げ要件を確認していきましょう。

①給与支給総額を年率1.5%以上増加

ものづくり補助金には、基本要件として「給与支給総額の増加」が定められています。

【給与支給総額の増加】

  • 事業計画期間において、給与支給総額を年平均成長率1.5%以上増加させること
  • 被用者保険の適用拡大の対象企業が、制度に先立って任意適用の取り組みを行う場合は、年平均成長率1%以上増加させること

補助金申請にあたって、事業者は上記要件を満たす3〜5年の事業計画を策定し、事業計画期間内には計画にもとづいて賃上げを実現しなければなりません。

ここでいう給与支給総額とは、非常勤を含む全従業員および役員に支払った給与や賃金、賞与、役員報酬のこと。ただし、福利厚生費や法定福利費、退職金は含みません。

従業員を雇用していない場合

事業者が従業員を雇用していない場合も、補助金の申請は行えます
その場合は、「この先従業員を雇用した場合には賃上げ要件を実現させる」という内容の誓約書を作成し、申請時に提出することになります。

この時使用する誓約書は、様式1-2 「賃金引上げ計画の誓約書」。ものづくり補助金総合サイトからダウンロードしてください。

②地域別最低賃金+30円以上

「最低賃金の引き上げ」も、ものづくり補助金の基本要件のひとつ。内容は次のとおりです。

【最低賃金の引き上げ】

  • 事業計画期間において、事業場内最低賃金を、毎年、地域別最低賃金+30円以上の水準にすること

申請にあたっては、事業者は3〜5年の事業計画の中で上記要件も満たし、それに向けて取り組まなければなりません。

なお、ここでいう事業場最低賃金とは、補助事業を行う事業場の中で最も低い賃金のことを指します。
また、地域別最低賃金は都道府県ごとに定められている最低賃金のこと。東京都の事業者を例に挙げると、2024年2月現在東京都の最低賃金は1,113円なので、事業者は事業場内最低賃金を1,143円以上に上げなければなりません。

事業内最低賃金の求め方

事業場内最低賃金を求める際には、各従業員の給与を時給換算する必要があります。
月給制の従業員の場合であれば、年間給与額を勤務時間で割って、時給を出しましょう。

例えば、年間給与額300万円で、1ヶ月20日間・1日8時間勤務の従業員であれば、300÷(20×8×12)=1562.5で、その従業員の時給は約1563円ということになります。
また、時給制で働いているアルバイトやパート従業員については、適用されている時給をそのまま判断要素として構いません。

事業計画策定および実施においては、こうして算出した各従業員の時給について、最低賃金+30円の条件を満たすよう、調整していかなければなりません

回復型賃上げ・雇用拡大枠を狙う場合の要件

ものづくり補助金では、16次まで「回復型賃上げ・雇用拡大枠」という申請枠が設けられてきました(17次・18次はなし)。
この申請枠で補助金に応募する場合には、賃上げに関するさらなる要件を満たさなければなりません。それが次の3項目です。

  • 前年度の事業年度の課税所得がゼロ以下であること
  • 常時使用する従業員がいること
  • 補助事業を完了した事業年度の翌年度の3月末時点において、その時点での給与支給総額の増加率が1.5%事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上の水準の増加目標を達成すること

他の申請枠についても独自の要件が定められていることがあるので、まずは公募要領をよく確認するようにしましょう。

賃上げの期限

賃上げをはじめとした基本要件は、申請時に作成した3〜5年の事業計画期間内に達成する必要があります。3〜5年のうち「何年で事業計画を策定したか」は事業者によって異なるので、自社の計画期間をしっかり意識しておきましょう。

また基本要件「給与支給総額を年平均成長率1.5%以上増加させること」については、「何年で事業計画を策定したか」によって達成すべき成長率が変わります。例えば、3年の計画であれば4.5%、4年であれば6.0%、5年であれば7.5%を達成しなければなりません。
事業計画は、その点も踏まえ作成することが大切です。

申請時に必要な書類

ものづくり補助金の申請時には、次の書類を提出する必要があります。

  • 事業計画書
  • 補助経費に関する誓約書
  • 賃金引上げ計画の誓約書
  • 決算書等
  • 従業員数の確認資料
  • 労働者名簿
  • 再生事業者であることを証明する書類(※再生事業者の場合)
  • 大幅な賃上げ計画書(※大幅賃上げを実施する事業者のみ)
  • 金融機関による確認書(※金融機関から資金調達を行う場合のみ)
  • 加点に必要な書類(※加点を希望する場合のみ)

提出書類の中には、賃上げに関する「賃金引上げ計画の誓約書」も含まれます。
必要書類は事業者によっても異なるので、申請にあたっては公募要領をよく確認するようにしてください。

ものづくり補助金の賃上げ加点とは

ものづくり補助金には、加点制度が設けられています。

この加点とは、得ることで補助金審査が有利になり、採択の可能性が高くなるというもの。事業者は、規定の項目の要件をクリアすることで、加点を得ることが可能です(最大6項目まで)。
これまでのデータからは、加点が多いほど採択率が高くなる傾向があります

加点項目は複数設定されていますが、そのひとつに「賃上げ加点」という項目があります。その内容は次のとおりです。

【賃上げ加点】
事業計画期間(補助事業完了年度の翌年度以降)における給与支給総額と事業場内最低賃金について、①もしくは②の通りの計画を策定し、事務局へ誓約書の提出を行なっていること

  • 「給与支給総額が年平均成長率平均3%以上増加」かつ「事業場内最低賃金が、毎年3月に、地域別最低賃金より+50円以上の水準を満たした上で、毎年+50円以上ずつ増加」
  • 「給与支給総額が年平均成長率平均6%以上増加」かつ「事業場内最低賃金が、毎年3月に、地域別最低賃金より+50円以上の水準を満たした上で、毎年+50円以上ずつ増加」

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領 17次締切分」より

上記は17次公募の賃上げ加点要件ですが、公募回によって要件は変わるのでご注意ください。

加点要件は必須要件ではないので必ず満たす必要はありません。しかし、補助金審査をより有利に進めるためには、加点への対応も必要でしょう。

事業完了時に賃上げできていなかった場合はどうなる?

ここまでご紹介したとおり、ものづくり補助金の受給にあたって、事業者は要件を満たす事業計画書を作成するだけでなく、事業完了までに各要件を達成しなければなりません
これを達成できない場合、事業者には次の対応が求められます。

原則|補助金の返還

事業完了時に、賃上げをはじめとした要件を達成できなかった場合、事業者は原則受け取った補助金を返還しなければなりません
この時の返還額は、次のとおりです。

【給与支給総額の増加目標が未達の場合】

  • 導入した設備等の簿価または時価のいずれか低い方の額のうち、補助金額に対応する分

【事業場内最低賃金の増加目標が未達の場合】

  • 補助金額を事業計画年数で除した額

補助金の返還を避けるためにも、事業は要件達成に向け、力を入れて取り組む必要があります。

返還しなくて良いケース

先述のとおり、ものづくり補助金には要件未達時の返還義務があります。
しかし、次のようなケースでは返還は免除されます。

  • 付加価値額が目標どおりに伸びなかった場合
  • 天災など事業者の責めに負わない理由がある場合
  • 再生事業者の場合

上記の場合については、事業完了時に要件を達成できなくても、補助金の返還を求められることはありません。

賃上げ要件を満たすためのポイント

最後に、補助金の賃上げ要件を満たすために重要な2つのポイントについて解説します。

役員報酬やボーナスも賃上げ要件の対象

賃上げ要件の対象となるのは、一般社員の基本給だけではありません。役員報酬やボーナス、各種手当なども、その対象になります。

基本給を上げてしまうと事業者の負担が大きくなりすぎる可能性もあるので、賃上げにあたっては、役員報酬やボーナスなどをうまく調整しながら、要件達成を目指すことが大切です。

全員の給料を上げる必要はない

賃上げ要件では、従業員全員の給料を上げる必要はありません。事業者が給料として支払った総額が要件のとおりに増加できていれば良いとされています。

そのため、貢献度の高い従業員のみ賃上げを行う、1人の役員の報酬を上げるという対応も検討しましょう。

まとめ

ものづくり補助金において、賃上げ要件の達成は必須です。これを達成するためには、事業者は、実現可能は綿密な事業計画を策定しなければなりません。
また、その前提として公募要領をよく理解しておくことも重要でしょう。

公募の内容や要件は、公募回によって変わります。補助金に応募する際には、必ず該当回の公募要領をよく確認するようにしてください。