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DX(デジタルトランスフォーメーション)とは「企業がデジタル技術を活用して業務やビジネスモデル、企業文化などを変革し、顧客に新たな体験を提供して、市場での競争力を高めること」を指します。この概念は2004年に提唱されて以降世界的に注目され、多くの企業や組織がその実現に向け、取り組みを行うようになりました。
しかし、DXを進める企業の中には、取り組みが失敗に終わる例も存在します。
そこで、今回は実際の失敗事例を基に、DXの失敗要因や成功ポイントについて詳しくご紹介します。
また、DXの成功事例についてはこちらもご一読ください。
「DX推進とは?成功事例やポイント等も簡単に解説」
DXでよくある失敗パターン
DXを実現しようと取り組みを始めたものの、変革がうまくいかず取り組みが失敗に終わってしまうケースは少なくありません。具体的には、次のような失敗パターンがよく発生しています。
- 導入したデジタルツールを最適な形で実際のオペレーションに適用できず、業務を効率化・自動化できていない
- デジタイゼーション・デジタライゼーションに留まっている
- 継続的に取り組みを行えていない
- システム導入によりトラブルが発生し、業務効率や顧客満足度が低下している
では、なぜこのような失敗が起こるのでしょうか。その主な要因については、次章で確認していきましょう。
DXで失敗する5つの要因
DXで失敗してしまう主な要因としては、次の5つが挙げられます。
【要因①】中長期的なビジョンが不明確
DXは、短期的な取り組みで実現できるものではありません。その実現には、中長期的な取り組みが必須です。それにも関わらず、中長期的なビジョンが不明確なまま、目先のデジタル化だけを推し進める例は少なくありません。
見切り発車で取り組むと、実際のオペレーションに合わなかったり方向性がずれてしまったりと、DXが失敗する可能性は高くなってしまいます。
これを避けるためには、DX実現のための中長期的なビジョンを策定し、それを基に短期的なビジョンを設定して、計画的に取り組みを進めていくことが大切です。
【要因②】組織全体で取り組めていない
DXは、ビジネスモデルや企業文化までも変革するものです。よって、取り組みにあたっては組織全体の協力と理解が欠かせません。特定の部署だけがDXに取り組んでも、それは真のDXにはなり得ないでしょう。
よって、DXの実現にあたっては、全ての従業員からDXへの理解を得て、組織全体が同じ方向を向いて取り組みを進める必要があります。
【要因③】DX人材の不足
DX推進の知見を持った人材をDX人材と呼びます。
日本ではDX人材が不足しており、各企業は自社でDXを進めるための人材を十分に確保できていません。また、従業員のデジタルリテラシーが不十分な企業も多いでしょう。
ノウハウに長けた人材が不足する中でDXを推進するのは難しいことから、施策が単純なデジタル化止まりになってしまう例は多くみられます。
【要因④】投資資金の不足
Webシステムの導入や人材の確保など、DXの推進には多額の資金が必要です。十分な資金が用意できない場合、DXは実現できず、中途半端なデジタル化で取り組みが止まってしまう恐れがあります。
資金については、前述の中長期的なビジョンとともに綿密な資金計画を策定し、「途中で資金が底をついてしまった」などということのないようにしましょう。
また、DX関連の補助金を利用し、資金を確保することも検討してください。
【要因⑤】経営層の関与が弱い
先ほど述べたように、DXは組織全体で取り組むことが大切です。
しかし、経営層がDXに対する正しい認識を持たず積極的に取り組みに関与しない場合、現場だけでDXを進めることは困難であり、社内組織全体のモチベーションも低下してしまう恐れがあります。特にトップダウンの意思決定が主となっている企業では、経営層がリーダーシップを取らなければ、DXを積極的に進めていくことは難しいでしょう。
つまり、効率的にDXを進めるためには、経営層による正しい認識と積極的なリーダーシップが重要になるのです。
DXの失敗事例
ここからは、DXの失敗事例として、General Electric社・Ford社・P&G社の3つの事例をご紹介しましょう。
【失敗事例①】General Electric
電力・再生可能エネルギー・航空事業などを手掛けるGeneral Electricでは、DXの実現を目指し、2011年からIoTプラットフォーム「Predix」の開発を実施しました。
このプロジェクトには多額の資金や人材が投入されたものの、成果が出ず、目標達成が不可能に。結果としてプロジェクトは縮小され、CEOも退任することとなりました。
失敗の要因
General ElectricがDXに失敗した要因としては、次の3つが考えられます。
- 戦略的なビジョンが不完全で、幅広い分野に手を出しすぎたこと
- プロジェクト進行の中で部署間の軋轢が生じたこと
- 実務において「Predix」を利用することにさほどメリットがなかったこと
計画性と慎重性の不足や組織全体を統率して理解・協力を得られなかったことが、この事例における失敗の要因だと言えるでしょう。
【失敗事例②】Ford
アメリカの自動車メーカーであるFordは、2014年に大規模事業変革を決定。パーソナルモビリティを軸にしたデジタル自動車の開発目標のため、子会社を設立しプロジェクトを開始しました。
しかし、この子会社は2017年に3億ドルもの損失を出します。これを受け、Ford社自体の株価も大幅下落し、当時のCEOは辞任することとなりました。
失敗の要因
FordがDXに失敗した要因としては、次の2つが考えられます。
- DX推進事業を子会社として切り離し運用したこと
- 経営層と現場の方向性が乖離していたこと
この事例では、DX推進事業を子会社として切り離して運用し、自動車製造事業とのコミュニケーションなしにDXが進められました。これにより経営層と現場の方向性が乖離し、組織全体でプロジェクトを遂行できなかったことが、失敗の要因だといえるでしょう。
【失敗事例③】P&G
2011年、当時のP&G社のCEOがDXイニシアチブを提唱。「各事業でデジタル技術を活用し、顧客へより良い商品やサービスを提供する」という目標を掲げました。
しかし、当時の深刻な不況下では、多額の投資をもってしても十分な成果を得られず、結果として同社の競争力は低下しました。DXイニシアチブを提唱したCEOも、辞任に追い込まれています。
失敗の要因
P&GがDXに失敗した要因としては、次の2つが考えられます。
- 漠然とした目標のもとでプロジェクトが実施されたこと
- 外的要因の考慮が十分でなかったこと
この失敗の要因は、目標や実施計画の甘さにあると考えられます。DXを成功させるためには、明確に目標を策定し、自社の課題を正しく把握して、あらゆる面から綿密な計画を練ることが重要です。
DXに失敗する大企業がある一方で、中小企業ではDX自体が進んでいません。その理由については「中小企業でDXが進まない理由|現状と課題・推進するメリット等を紹介」で解説しています。
失敗事例から学ぶ:DXを成功させるポイント
最後に、失敗事例をもとにしたDXを成功させるためのポイントを4つご紹介します。
【ポイント①】中長期的なビジョンを明確にする
DXを成功させるためには、まず中長期的なビジョンを持つことが大切です。目的や目標とともに、明確なビジョンを持ち、それをもとに計画やロードマップの策定を行うようにしましょう。
ビジョンが曖昧だったり短期的だったりすると、組織内で方向性がずれてしまったり施策がただのデジタル化で止まってしまったりして、DXが実現できない可能性があります。
【ポイント②】経営層が先導する
DXの実行にあたっては、経営層によるリーダーシップも必要です。経営層が先導してDXを進めることにより、各従業員の理解は得やすくなり、企業全体で同じ方向を向いて取り組みを進めることが可能になるためです。
【ポイント③】身近なところから始める
DXの取り組みは、初めから幅広い部分に手をつけるのではなく、まずは身近なところ・手をつけやすいところからスモールスタートで行うことをおすすめします。小規模に取り組みを始めることで、徐々にDX推進のノウハウを身につけながら、成功体験を積んでいくことができるためです。
いきなり大規模な取り組みを進めてしまうと、現場の理解を得られないだけでなく、失敗のリスクも大きなものになるので気をつけてください。
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【ポイント④】DX人材の育成・確保
DXの推進を成功させるためには、DXの知見に長けたDX人材が必要です。DXの実現にはさまざまな専門知識・技術が必要であるため、DX人材がいなければ取り組みは思うように進まず、失敗のリスクも高くなります。
しかし、現状、DX人材の供給は十分ではありません。企業は、外部企業のサービスを利用しながらDX人材を確保するとともに、今後を見据えたDX人材の育成にも力を入れていく必要があります。
まとめ
DXを成功させるためには、綿密な計画策定が必要です。ビジョンや人材、資金など、さまざまな面における計画策定の不十分さは、DXの失敗に繋がるためです。
またDX推進・成功のためには、他社の失敗事例をよく調べておくことも有効でしょう。失敗事例からその要因・対策を理解すれば、自社のDXで同じ失敗を起こすことはなくなります。
特に自社と同業種の事例については、よく確認しておくと良いでしょう。