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日本のEC市場は、年々拡大を続けています。コロナ禍の影響もあり、近年ネットショッピングの利用者は急速に増え、2021年にはその市場規模は20兆円を大きく上回りました。
このような消費者の需要に答え、新たに自社のECサイト構築を思案する企業も増えています。
クラウドECは、サイト構築の手段として有効です。
これを利用することで、企業は効率的で便利にサイト構築を進めることができます。
今回はこのクラウドECについて、その概要とメリット・デメリットを詳しく解説します。
クラウドECとは
クラウド上に設置されたプラットフォームを利用して、ECサイトの構築を行えるサービスを、「クラウドEC」と呼びます。
通常、自社のECサイトを構築しようとすると、サイトに搭載するシステムを運用するためのプラットフォームを用意しなければなりません。これを自社のサーバにインストールしてはじめて、在庫管理やショッピングカート、決済などといったECサイトの機能が利用できるようになります。
しかし、クラウドECを利用する場合、この手続きは不要。企業はプラットフォームをインストールすることなく、クラウド上でECサイトを立ち上げることができます。
このサービスによるサイト構築には、多くのメリットがあります。しかし、年商や目的などの条件が合う企業でなければ、それを十分に享受することはできないので、注意が必要です。
クラウドECと他の構築サービスの比較
サイト構築サービスは、大きく次の4種類に分類されます。
(初期費用約500万円〜、月額費用数十万円程度、導入まで最短約3ヶ月)
・ASP
(初期費用約10〜30万円、月額費用数万円程度、導入まで最短約1ヶ月)
・ECパッケージ
(初期費用約600万円〜、月額費用数十万円程度、導入まで最短約3ヶ月)
・フルスクラッチ
(初期費用約1,000万円〜、月額費用数十万円程度、導入まで最短約1年)
これらには、費用や導入までに必要な期間以外にも違いがあります。
それぞれの違いを比較していきましょう。
ASPとの比較
「ASP」とは、アプリケーションとして提供されるサービスのこと。この方法によるサイト構築には、クラウドECと同様に、「クラウド上で構築を行う」「機能やセキュリティが自動アップデートされる」という特徴があります。
ただしASPの利用は、クラウドECよりもコストが安く済みます。初期費用も安価で導入の手間もかからないため、手軽なサイト構築が叶います。
しかし、その内容は汎用性の高い仕様になっていて、自社ニーズに合った柔軟なカスタムを行うことはできません。
ECパッケージとの比較
ECサイトの運営に必要な機能があらかじめひとまとめになったサービスを、「ECパッケージ」と呼びます。これを自社サーバにインストールすることで、一からプログラミングを行うことなく、簡単にサイトを構築することができます。
このタイプとクラウドECとは、費用感や導入に必要な期間はさほど変わらず、どちらも拡張性に優れています。
ただしECパッケージは、システムを自動で最新の状態に保つことはできません。アップデートは手動で行う必要があり、そのための費用も必要です。
フルスクラッチとの比較
一から自社でサイト構築を行う方法を、「フルスクラッチ」と呼びます。
この方法は、導入にあたって莫大な費用と労力、時間が必要です。導入後のアップデートは自動で行われないため、費用を追加しながら、手動で対応しなければなりません。
ただし、拡張性はかなり高く、あらゆるニーズを反映させたサイトを作ることができます。独自のニーズがあり、費用や人手、時間に余裕がある場合には、フルスクラッチも選択肢のひとつになるでしょう。
クラウドECのメリット
クラウドECによるサイト構築には、次のような複数のメリットが期待できます。
・セキュリティの安全性が高い
・カスタマイズ性が高い
・自社インフラの整備がいらない
・機能の追加に費用がかからない
・サーバダウンに備えられる
各メリットについて詳しくご説明します。
システムを最新の状態に保てる
クラウドECを利用して構築したECサイトでは、機能の追加やアップデートは自動で行われます。手動でこれらの対応を行なったり、そのための費用を支払ったりする必要はありません。
よって、負担なく、システムを常に最新の状態に保つことが可能です。これは、ASPも同様です。
一方、パッケージやフルスクラッチの場合は、時間が経つにつれシステムが古くなってしまうため、定期的なシステム改修が必要。これには手間も費用もかかり、企業の負担が大きくなる恐れがあります。
セキュリティの安全性が高い
ECサイトは顧客の個人情報や決済情報を扱うことが多いため、安全性の高い運営が求められます。
クラウドECでは、セキュリティ機能が自動的にアップデートされる点が大きな特徴。新たな脅威の発生に対応し、常に最新のセキュリティ機能を有することができるため、ECサイトの安全性を高いレベルで維持することが可能になります。
カスタマイズ性が高い
カスタマイズに優れている点もクラウドECのメリットのひとつです。その柔軟性はフルクラッチほどではないもののASPより高く、自社のニーズに合ったサイト構築が叶います。
これは、「共通のプラットフォーム」と「企業ごとのカスタマイズ領域」の両方を設置しているクラウドECならではの特徴だと言えるでしょう。
自社インフラの整備がいらない
クラウド上でECサイトを運営するクラウドECの場合、自社でインフラを整備する必要はありません。サーバの用意やその整備のための人材配置がいらないので、その分リーズナブルで効率的な運用が可能です。
機能の追加に費用がかからない
前述の通り、クラウドECでは新機能が自動で追加されます。この機能追加にあたって費用はかかりません。
パッケージやフルスクラッチで機能を使いしようと思うと、それには多額の費用が発生します。
追加費用なしで追加機能を利用できる点は、このサービスの主要なメリットです。
サーバダウンに備えられる
ECサイトでは、新商品がリリースされたり人気商品が入荷したりした時にアクセスが殺到し、サーバダウンが起きる恐れがあります。
しかし、クラウドECではサーバの増減を調整することが可能です。つまり、アクセス過多が予想される時にはサーバ容量を増やし、それ以外の時は減らすといった対応ができるのです。
これにより、企業はECにおける販売機会を逃さず、サーバを安定的に維持することができます。
クラウドECのデメリット
クラウドECの利用においては、次のデメリットについても把握しておく必要があります。
・ソースコードが開示されていない
順に見ていきましょう。
ある程度の費用が必要
先ほどご紹介した通り、クラウドECを利用したサイト構築にかかる費用は、初期費用で約500万円から、毎月のランニングやコストで数十万円程度。決して安いとは言えません。
この価格はフルクラッチに比べれば安く、また追加機能を追加料金なしで使える点は魅力ですが、それでも運用を続けるにあたって費用は嵩みます。企業の規模や状況によっては、これが大きな負担になることもあるでしょう。
ソースコードが開示されていない
クラウドECでは、ソースコードが開示されていません。そのため、自社で保守管理を行うことは不可能で、それはサービス提供者に任せることになります。
よって、自社で保守管理を行いたい場合には、この利用は向きません。
ECサイトの構築システムを選ぶ際のポイント
ECサイトの構築システムには種類があり、またシステム・サービスによって機能や費用、操作性は大きく異なります。自社ニーズを実現するサイトを構築するには、システム・サービス選定時に次の3つのポイントを重視するようにしましょう。
・自社のECサイトの目的に合っているか
・自社のECサイトの運営体制に合っているか
これらが自社にマッチしなければ、満足のいくECサイト運営は困難になります。それを判断するには、まず自社の状況とニーズを明確にし、それを基に利用するシステムやサービスを選ぶと良いでしょう。
自社のEC年商に見合うか
規模の小さな企業の場合、導入・運用にあまり費用がかからないASPがおすすめです。ある程度のコストがかかるクラウドECやパッケージは年商が1億円以上の中規模企業向き、多額のコストがかかるフルスクラッチであれば年商30億円以上の大企業向きでしょう。
年商や規模に合ったものを選定しなければ、サイトの継続的な運用が金銭的に難しくなる可能性があります。
自社のECサイトの目的に合っているか
ECサイトに対する自社の目的やニーズを実現できるかどうかも重要なポイントです。
例えば、導入時期やコスト、カスタマイズ性など。導入時期やコストを重視するならASPが適していますし、カスタマイズ性を重視するならクラウドECやフルスクラッチが適しています。
スムーズに選定を進めるため、自社の目的やニーズは事前に明確化しておきましょう。
自社のECサイトの運営体制に合っているか
クラウドECまたはASPを利用した場合、保守管理など主要な運営はサービス提供者が行います。一方、パッケージまたはフルスクラッチの場合、運営は自社が担います。
そのため、運営の手間を削減したいなら、前者2種のどちらかを選ぶのがおすすめ。逆に自社にエンジニアがおり、ニーズに合わせた柔軟な運営をしたいなら、後者の利用が向いています。
まとめ
インターネットショッピングが一般化した現代において、ECの需要は増え、今後もその市場規模は成長していくと予想されます。
そんな中、企業がうまくECサイトを構築・運用するには、まず自社に合ったサイト構築サービスを見極めることが大切です。サイト立ち上げにおいては、それぞれの構築サービスの特徴を把握した上でそれを自社ニーズと比較し、慎重に判断するようにしてください。