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日本では、多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)実現に向けた取り組みを進めています。また、政府もこの取り組みを活性化すべく、DXをサポートするさまざまな施策を実施しています。
政府および付随機関のDXサポート施策には、多方面での情報発信やIT導入補助金の整備などさまざまなものがありますが、DX白書の発行もそのひとつ。この資料には、DX推進のヒントとして役立つ多くの情報がまとめられています。
では、DX白書には具体的にどのような情報が記載されているのでしょうか。
そこで今回は、企業のDX推進に役立つDX白書について詳しく解説します。
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DX白書とは?
DX白書とは、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が公表している、DXに関する情報を取りまとめた刊行物のこと。国内・国外の企業における取り組み状況や戦略、課題など、DX関連の情報が総合的に記載されています。
DX白書では、海外企業との比較により、日本企業の抱える課題が明確に示されており、また必要な技術や人材など具体的な取り組みの方向性に関する解説も記載されています。
DXを推進する企業にとって、この刊行物はひとつの手引きとなるでしょう。
このDX白書は、IPAが過去に発行していた「IT人材白書」と「AI白書」を統合して、2021年に発行開始されました。
その後2023年3月16日に「DX白書2023」が発行され、2023年7月現在、これが最新の情報となっています。
DXについては「DX推進とは?成功事例やポイント等も簡単に解説」で詳しく解説しています。
IPAとはどんな機関?
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)は、経済産業省所管の独立行政法人です。
IPAのビジョンは、「誰もがITの恩恵を享受できる社会」を実現すること。これを実現するため、IT技術発展のサポートや人材育成、IT社会の動向調査、また情報セキュリティに関する調査・研究などを主な事業としています。
IPAは政策実施機関のひとつです。そのため、現在日本が国をあげて進めているDXを推進するための情報発信も担っています。DX白書の刊行もそのひとつだと言えるでしょう。
DX白書を読む前に知っておきたいキーワード
DX白書を読むにあたっては、IT・ビジネス用語を正しく理解しておく必要があります。
ここでは、白書内に出てくる用語とその意味を一覧でご紹介します。
用語 | 意味 |
DX(デジタルトランスフォーメーション) | 組織横断的かつ全体の業務プロセスのデジタル化 新たな顧客エクスペリエンス創出のための事業およびビジネスモデルの変革 |
デジタイゼーション | アナログ・物理データのデジタルデータ化 |
デジタライゼーション | 個別の業務・製造プロセスのデジタル化 |
CDO(Chief Data Officer) | 最高デジタル責任者 経営的な立場でDX推進をリードする役職 |
CoE(Center of Excellence) | 目標達成のため、人材や設備、ノウハウなどといったリソースを横断的に集約すること |
アジャイルの原則 | 顧客満足のため、俊敏かつ柔軟に変化へ対応し、企画・実行・検証のサイクルを継続的に反復させること |
ケイパビリティ | 組織が有する能力や強み |
DX白書には専門用語が頻出しますが、上記の用語の意味は最低限押さえておきましょう。
「DX白書2023」の要旨
「DX白書2023」は、主に次の5つの章から構成されています。
第2章 DXの取組状況
第3章 企業DXの戦略
第4章 デジタル時代の人材
第5章 DX実現に向けたITシステム開発手法と技術
ここからは、「DX白書2023」のエグゼクティブサマリーを参考に、各章の要旨をご紹介していきます。
第1章 国内産業におけるDXの取組状況の俯瞰
この章では、企業のDXへの取り組み状況を調査し、それを俯瞰図で可視化した上で、次のような現状を示唆しています。
- 大企業ではその4割強がDXへの取り組みを進めているが、中小企業では予算や人材、風土などの課題からDXへの取り組みを進めている割合は1割強に留まっている
- 情報通信業や金融・保険業では、他産業と比べDXへの取り組み割合が高い
- 東京23区に本社を構える企業のDXへの取り組み割合は高いが、都市や市町村の規模が小さくなるにつれ、DXへの取り組み割合は低くなる
- 売上規模が小さい企業であってもDXにより新たなビジネスモデルを創出する例は存在しますが、売上規模が大きくなるほどより大規模な取り組みが見られる
- 産業や地域によってDXへの取り組み割合には差があるが、どの産業・地域であってもDXへの取り組み例は見られ、業務効率化や顧客体験の変革、課題解決に成功している
- 単独でのDXによる課題解決が困難な企業においては、自社と外部企業の協業によるDX事例も見られる
これらの現状から、DXへの取り組み状況には、企業の規模や産業の種類、地域によって大きな差があることがわかります。
第2章 DXの取組状況
この章では、DXの取り組み状況を日米の比較によって示しています。
- DXに取り組んでいる日本企業の数は、2021年では55.8%、2022年では69.3%と増加しているが、アメリカの77.9%には及んでいない
- 全社的にDXに取り組んでいる日本企業の割合は54.2%で、アメリカの68.1%に及んでいない
- 従業員1,001人以上の日本企業では、DXに取り組んでいる割合が94.8%とアメリカと比べても高い
- 従業員100人以下の日本企業では、DXに取り組んでいる割合が約40%と、アメリカと比較しても遅れをとっている
- 2022年の調査では、DXの成果が出ている日本企業の割合は58.0%だが、アメリカではDXの成果が出ている企業の割合は89.0%にもなる
上記のことから、いまだDXにおける日米差は大きいということがわかります。
第3章 企業DXの戦略
この章では、企業がDXを進めるために必要な戦略についてまとめられています。
- DXの推進にあたっては、企業は戦略策定・推進・評価というプロセスを迅速なサイクルで反復し、失敗から学習していく必要がある
- 日本企業は外部環境の変化への認識および対応が遅れているため、変化をチャンスと捉えるマインドシフトの必要がある
- デジタイゼーションおよびデジタライゼーションにおいて成果が出ている日本企業の割合はアメリカと変わらない水準だが、デジタルトランスフォーメーションにおいて成果が出ている日本企業の割合は20%台であり、アメリカの約70%との間に大きな差がある
- アジャイルの原則とアプローチを取り入れている日本企業の割合は5割未満で、アメリカの7割以上との間に大きな差がある
- 日本ではIT分野に精通する役員の割合が非常に低く、予算も継続的に確保されていないことから、経営層の理解不足がDXの壁となっている可能性がある
- DXの推進においては、適切なKPI設定による成果評価が重要だが、日本企業ではこの成果評価が十分になされていない
- 日本企業は、先進技術を用いた新ビジネスへの取り組みでのアメリカに遅れをとっている
上記のことから、日本企業はデジタイゼーションやデジタライゼーションのレベルでは成果を出しているものの、適切なDXの推進という点ではいまだ充分な成果を挙げられておらず、その背景には経営層の理解不足や成果評価の不十分さ、先進技術に対するアンテナの低さなどがあることがわかります。
第4章 デジタル時代の人材
この章では、日本企業におけるDX人材の現状についてまとめられています。
- 日本では確保すべきDX人材の人材像を明確化していない企業が多いが、適切な人材確保のためにもこれを早急に明確化する必要がある
- 日本企業では、DX人材の量も質も不足している
- DX人材の確保手段としては、日米ともに社内育成の割合が多いが、日本では人材が不足していることから、社外からの獲得手段にも力を入れていくべきである
- 日本ではDX人材の育成を支援している企業の割合が少なく、多くの支援を拡充しているアメリカ企業との間に大きな差がある
- 日本では、DX人材に特化した評価基準を設定していない企業が79.3%にものぼる
- 日本では、企業風土や文化の点でもDX推進の課題が多い
このように、日本企業ではDX人材はもちろん、その育成や確保、評価の体制も十分に整っていません。DX推進・実現において、これは喫緊の課題だと言えるでしょう。
第5章 DX実現に向けたITシステム開発手法と技術
第5章では、DX実現に関する技術的な課題がまとめられています。
- DX実現のためには、「スピード・アジリティ」「社会最適」「データ活用」を兼ねたITシステムが必要だが、日本企業におけるITシステムの達成度は2〜4割と、アメリカに比べ低い
- 日本ではITシステムの構築にSaaSやIaaS、PaaSを用い、自社でIT資産を保有しないことが多いため、新たな開発技術の活用度が低い
- 日本ではレガシーシステムが残っている企業が多い
- データの利活用においては、日本はアメリカよりもその割合が高いが、全社横断的なデータの利活用という点では課題が残る
- AIやIoT、デジタルツインの利活用においては、日本はアメリカに大きく遅れをとっている
このように、日本企業は技術の面でもアメリカに遅れをとっており、これがDXの足枷になっていることがわかります。
まとめ
DX白書では、日本企業のDXの現状と課題が明確化されています。DXの失敗を回避するためにも、日本企業はDX白書を参考に自社のDXを進めるべきでしょう。
DX白書は、IPAのWebサイトからPDFでの閲覧が可能です。
また、印刷書籍や電子書籍としても発売されており、Amazonや楽天などの主要モールから購入することができるので、企業の担当者は必ず目を通すようにしてください。
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