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近年、コロナ禍の影響もあり、ECサイトの利用は増加傾向にあります。そんな中、企業はUXを高めるため、サイトにさまざまな機能を付加しています。
そのひとつが「レコメンドエンジン」。この機能は、UX向上による売上や顧客満足度のアップに効果的で、多くのサイトに導入されています。
今回はこのレコメンドエンジンについて、その仕組みやメリット・デメリットを詳しく解説します。
レコメンドエンジンとは?
レコメンドエンジンとは、ECサイトの利用において、各ユーザーにおすすめの商品を表示するシステム。いわゆる、レコメンド機能のことです。
例えば、ECサイトに表示される「あなたへのおすすめ商品」や「この商品を買った人はこんな商品も買っています」と言うような表示が、これにあたります。
この機能で表示される商品は、ユーザーの過去の閲覧履歴や購入履歴などといったデータから割り出されます。
つまり、データから各ユーザーの趣味嗜好を導き出し、それに合った商品をおすすめするECサイトの機能をレコメンドエンジンと呼ぶのです。
レコメンドエンジンの仕組み
レコメンドエンジンの仕組みは、大きく次の5つに分類されます。
・ルールベースレコメンド
・パーソナライズドレコメンド
・コンテンツベースフィルタリング
・ハイブリッド・レコメンデーション・システム
それぞれの仕組みの内容を見ていきましょう。
協調フィルタリング
協調フィルタリングは、蓄積したユーザーの閲覧・購買履歴をもとにおすすめの商品を選定し、表示する仕組みです。
この仕組みは、大きく次の2種類に分けられます。
- ①アイテムベースレコメンド
- ユーザーの購買履歴から、関連性の高い商品を導き出し、それをおすすめする
(例:プリンタを購入者はインクも併せて購入する傾向にあるため、プリンタ購入者のページにおすすめ商品としてインクを表示する) - ②ユーザーベースレコメンド
- 購入者と行動履歴の類似度が高いユーザーを導き出し、そのユーザーが閲覧・購買した商品をおすすめする
(例:ユーザー①が商品A・ B・Cを購入し、ユーザー②が商品A・ Bを購入したら、①と②は類似性が高いとして、②のページには商品Cがおすすめ商品として表示される)
これらは、複数あるレコメンドエンジンの仕組みの中でもっとも一般的に利用されている仕組みです。
ルールベースレコメンド
運営者が決めたルールに基づいておすすめの商品を表示する仕組みを、ルールベースレコメンドと呼びます。
この方法では、蓄積されたデータではなく運営者の希望によるルールが基になるため、運営者がおすすめしたい・購入して欲しい商品を効率的にアピールすることが可能です。そのため、これはキャンペーンや期間限定商品の販売においてよく利用されています。
パーソナライズドレコメンド
パーソナライズドレコメンドとは、各ユーザーの閲覧・購買履歴からその趣味嗜好を導き出し、それに合った商品をおすすめする仕組みのことです。
協調フィルタリングではユーザー本人と他ユーザーの行動を基にレコメンドを行いますが、パーソナライズドレコメンドではユーザー本人だけの行動を分析し、レコメンドを行います。
基データを本人だけのものに絞ることにより、よりその人に合った商品をおすすめできる点が、この仕組みの特徴です。
コンテンツベースフィルタリング
「行動」とそれに繋がる「商品グループ」をあらかじめ決めておき、その行動をしたユーザーに対して、商品グループの商品をおすすめとして表示する方法を、コンテンツベースフィルタリングと呼びます。
ECサイトでシャツを閲覧した人に対し、似たデザインのシャツをレコメンドするような機能が、これにあたります。
コンテンツベースフィルタリングでは、閲覧・購買したものと似た商品(別メーカーの同商品、同じメーカーの別モデルなど)を表示することができます。また、その商品との類似度が高い順に表示することも可能です。
事前のグルーピングは指定できるため、データが十分に蓄積されていない状態でも活用できます。
ハイブリッド・レコメンデーション・システム
上記の中から複数の仕組みを組み合わせて行うレコメンドエンジンを、ハイブリッド・レコメンデーション・システムと呼びます。
この仕組みでは、各仕組みの弱点をカバーしながら、高い精度のレコメンドを実現することができます。
レコメンドエンジンの種類
レコメンドエンジンの主な種類は、「ASP型」と「オープンソース型」の2つ。どちらを選ぶかで、導入の手軽さやカスタマイズ性、対応規模などは異なります。
ASP型
ASP(Application Service Provider)とは、アプリケーションとして提供されるサービスのこと。このサービスは、インターネット経由で利用することができます。
この型は、手間やコストの面で手軽に導入しやすく、小規模利用もしやすいのが特徴。柔軟なカスタマイズは難しいですが、種類が多く、多くの選択肢からサービスを選ぶことができます。
現在利用されているレコメンドエンジンの大部分には、ASP型が採用されています。
オープンソース型
オープンソース型では、無料で一般に公開されているソースコードを基に、自社でシステムを構築し、レコメンドエンジンを完成させます。
この方法は、システム構築に手間と時間がかかりますが、カスタマイズ性に優れているため、自社のニーズに合ったシステムを構築することが可能です。また、機能性を高めることもでき、規模の大きなECサイトにも対応できます。
レコメンドエンジンのメリット
レコメンドエンジンには、次の2つのメリットが期待できます。
・顧客満足度向上
レコメンドエンジンによって、各ユーザーの趣味嗜好に合った商品を表示できれば、ECサイトにおける商品の購買率や客単価は上がります。おすすめの商品を表示することで、ユーザーのニーズを顕在化させることができるためです。
また、この機能は接客の一種とも考えられます。これを利用することで、店舗で接客をする際に顧客に商品をおすすめするように、ECサイトでも接客ができるようになるのです。
さらに、データを基にした的確なレコメンドは、サイトに対する顧客の信頼度を高めます。
これにより顧客満足度が上がれば、リピーターは増え、LTV(顧客生涯価値)を高めることも可能でしょう。
レコメンドエンジンのデメリット
レコメンドエンジンの導入を検討する際には、次のデメリットについても把握しておく必要があります。
・全ての商品をレコメンドできない
この機能を活用するためには、ユーザーの趣味嗜好を導き出す基となるデータが必要です。データが十分に蓄積されていない状態では、的確なレコメンドは行えません。
また、取り扱う全ての商品を表示できるわけではないという点にも注意が必要です。
データを基にレコメンドを行うこの機能では、閲覧者や購入者が少ない商品は表示されにくい傾向にあります。
レコメンドエンジンを選ぶ際のポイント
レコメンドエンジンの選定にあたっては、自社ニーズとサービス内容をよく比較する必要があります。
特に次の3つのポイントには注意し、慎重にサービスを選ぶようにしましょう。
ポイント1:費用対効果
レコメンドエンジンにかかる費用は、サービスによって異なります。一般的に機能的に優れたものほどその価格は高くなる傾向にありますが、重要なのは機能の多さではなく、自社にとっての費用対効果です。
費用対効果の高いサービスを選ぶには、まず自社ニーズを明確にし、それを基に機能に優先順位をつけるやり方がおすすめです。
ポイント2:既存ツールとの連携の可否
レコメンドエンジンは、MAやSNSなどの他ツールと連携させることで、より多くのデータを蓄積し、精度を上げることができます。
サービスによって対応可能ツールは異なるため、自社で利用している、また導入予定のツールとの連携可否については、事前に確認しておくようにしましょう。
ポイント3:マルチデバイス対応の可否
スマートフォンやタブレットなど、マルチデバイス対応のサービスを選べば、ユーザーにとっての利便性は向上します。近年ではモバイル端末からネットショッピングをする人も多いため、この機能は必須でしょう。
ただし、サービスによってはデバイス追加による追加料金が発生することもあるため、よく確認するようにしてください。
まとめ
レコメンドエンジンは、ECサイトの売上アップに効果的な手段です。多くの企業がECビジネスに参入し競争が激化する中で、「インターネットショッピングでありながら接客ができる」このシステムの導入は、大きな強みとなるでしょう。
ただし、レコメンドエンジンは種類によって具体的な機能が異なります。導入時には、自社ニーズと各サービスの機能を比較し、慎重に選定を行うようにしましょう。