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DX(デジタルトランスフォーメーション)が注目を集めている昨今、企業の中には「DXを推進する方法が分からない」「社内にDX人材がいない」といった課題を抱えている場合も多いでしょう。

本連載では、DX推進に成功した企業に、その進め方や課題、苦悩などをインタビュー。第4弾となる今回取り上げるのは、医療法人藍整会 なか整形外科 様です。

三つ星レストランの様なクリニックを目指し、待って当然の外来診療や、今までの医療界の固定概念をひっくり返すことを目標の1つに運営されている同クリニック。

クリニック*1にもかかわらず、大学病院*2以上の治療が提供可能という特徴などもあり、サントリーサンバーズのチームドクターをはじめとした、多くのトップアスリートの治療も行っています。

*1 クリニック:(入院患者用のベッド数が20以下の小規模な病院)
*2 大学病院:一般の病院では治療困難と判断された疾患をメインに研究・治療を行う大病院

新たな取り組みや、トップアスリートなどからの評価もあり、新聞やWEBメディアなど、今では多くの媒体で取り上げられている なか整形外科様ですが、DXを始める前は、『大量の紙による情報管理』『会計や予約など、1つ1つの作業に発生する長い待ち時間』など、病院によくあるアナログ体質な経営に課題を感じていたところがスタートだったと言います。

そんな同クリニックが社内外の多くの手続きをデジタル管理で一元化し、残業時間の短縮など、業務効率を大幅に改善して現在に至るまでに、どのような苦悩や工夫をされてきたのか。理事長の樋口様に伺ってきました。

「病院は不便な制度が多い」医師としての実体験から改革をスタート

DX推進に注力するようになったきっかけを教えてください。

事業継承がきっかけです。もともと別の経営者から事業を継承する形でクリニックの運営を始めたのですが、継承直後には下記のような病院によくあるアナログ体質な経営に課題を感じていました。

【当時の運営状況】

  • カルテなどの情報は大量の紙で管理
  • 会計は現金のみ
  • 診察や会計など、院内の1つ1つの業務に長い待ち時間が発生
  • 予約受付専門の事務員を雇用

事業継承前は別の病院で医師として勤務していましたが、当時のうちだけでなく、規模の大小問わず、どこにいっても病院は似たような状況でした。今でも上記のようにアナログな病院やクリニックも少なくないのが現状です。

私は個人的にずっと解決すべき問題だと感じていました。そのため、事業継承して自分のクリニックを持つことになったタイミングで、これまで課題に感じていた上記のような状況を改善しようと着手し始めたのがきっかけです。

DXを始めるにあたって、どんなことから着手されたんでしょうか?

医療業界ー病院・クリニックのDX事例|なか整形外科|樋口様

電子カルテの導入ですね。やっぱり紙での情報管理は現場で最も大変だと感じていたことの1つだったので、カルテのデジタル化を1番に選びました。情報を管理している紙の紛失リスクがあったり、必要な情報を見つけるのに時間がかかったりして、スタッフ側の負担はもちろん、患者さんにも迷惑がかかりますので。

電子カルテの導入だけでもかなり便利になりましたが、電子カルテの導入後は、予約と会計もデジタル化しました。

予約はそれまで人力で主に電話などを使ってやっていたのですが、今はLINEやブラウザからネット予約できるように変わりました。受診日になったら自動でリマインド通知が飛ぶように仕組み化しています。

会計についても、電子決済などを導入したり、システムと連携したりして、たとえばクレジットカードを登録している患者さんは事後決済でまとめて請求する形なので、当日はお会計もせず、診察が終わり次第すぐに帰宅することなども可能になりました。

DXを推進する中で反発などはありましたか?

患者さん、スタッフ共に、ほとんど反発は無かったです。たとえば診察予約は使い慣れているLINEなんかと連携していますし、やっぱり利便性を体感してもらいやすい分、むしろ「こっちの方が便利」と好意的な方が多い印象です。

強いて言うなら、年配のスタッフ、患者さんはやっぱり嫌がったり、使うのに苦労したりするシーンが多々見受けられます。そういう方には若いスタッフが一緒になって使い方を教えたりして、地道に頑張るようにしています。

とはいえ、今どきは70歳、80歳の方でもスマホやLINEぐらいは使いこなしている方も多いので、そこまで課題感は感じていないですね。

具体的なツールなどの活用状況を教えてください。

現在の各業務に対するツールの活用状況は、下記のようになっています。

医療業界ー病院・クリニックのDX事例|なか整形外科|ツール・システムの活用事例

予約から電子カルテの入力、その後のレセプト請求*までかなりデジタル化されています。『メディカル革命』と『M3デジカル』を連携させているので『メディカル革命』を見ればすべての情報が分かる状態です。

*治療費から患者負担分を差し引いた保険機関の支払い分を審査支払機関に提出し、診療報酬を請求すること

活用例として、たとえばうちは整形外科なのでリハビリを結構やるんですけど、進捗状況やキャンセル率、稼働率などのデータ管理もできますし、そういうのを簡単に見れるようになってます。1日の売り上げとかも一瞬で出るので、経営的にもかなりプラスですね。

導入後の反響について教えてください。

残業がほとんど無くなったことや、自動引き落としで会計をせずに帰宅できること、電子カルテで患者さんの情報管理が楽になったことなど、導入して得られたメリットや反響はたくさんありますが、1番は予約管理が圧倒的に楽になったところが大きいですね。

もともと、予約管理専門の受付スタッフがいたぐらい予約管理は大変だったのですが、DX推進後は管理がほぼ自動化できているので、専業スタッフが不要になりました。

また、出先でもスマホから予約状況が確認できるので、会話の流れからその場で予約を受けるといったことも可能になりました。紙で管理していた時代は、クリニックに戻らないと予約状況もわからない状態だったので、かなり便利に感じています。

LINEを通して予約できたり、お会計も不要だったりと、他の病院やクリニックと比べて圧倒的に待ち時間が少ないため、患者様の評価も高いです。

成功した秘訣には何があると思いますか?

パッと思いつくところで言うと、成功の要因は主に3つあると思います。

1.新規患者数 > リピート患者数というビジネスモデル

1つ目は、常に新規患者を集患し続けることが前提となっているビジネスモデルです。やはり通院すればいずれは治っていくので、基本患者さんの半数近くが新規です。そのため、慣れ親しんだアナログスタイルを変えるというよりは、初めからIT化された状態で通院がスタートするので、それが当たり前の状態として始まる分、抵抗感がそれほど無いというところもあると思います。

2.セキュリティについて過度に厳しくしない運営スタンス

2つ目は、セキュリティなどについて、そこまで細かく言及しないというスタンスです。人によっては「クラウドなんかで管理してセキュリティは大丈夫なのか?」「SNSでのプライバシーなどのリスクは?」と細かく考えるかもしれません。ですが、当院はそこまで細かく気にしないで、SNSやクラウドツールなど、良いと思った施策は基本試すスタイルでやっています。
IT関係に詳しいスタッフも多いので、もちろん最低限のラインは守っています。ただ、皆さんが使うGoogleやApple製品なんかも極論クラウドサービスですし、そこまで細かいことを気にする必要は無いのでは?というのが当院のスタンスですね。

3.見過ごされがちな一方、非常に重要な”現場視点”を取り入れたDX推進

3つ目が、現場の困りごとを解決するようなDX推進を行うことです。一見すると当たり前のように思えますが、DX推進に悩む組織はここができていないパターンが多いのかもしれません。

特にツールの導入だけして活用が進まないといった組織の場合、”経営層”が現場の管理のためにデジタルツールを導入して、現場に入力作業を依頼するといった”経営層起点”のDXになっているのかなと。
もちろん現場の管理や可視化も重要だとは思いますが、現場視点で考えると、可視化のための入力業務だけ増えて、現場には何のメリットも無いので、きちんと取り組む動機がありません。そのせいで普及が進まないという負のスパイラルに陥っているのではないでしょうか。

”経営層起点”のDXから”現場起点”のDXにするには、やはり現場の意見を拾って反映するように推進することが1番だと思います。当院の場合は、私が前の病院で現場勤務していた際に実体験したDXの課題を解消するような形で現場視点を取り入れました。組織によっては、それがDX推進担当者による現場へのヒアリングなどの場合もあるでしょう。

いずれにせよ『現場の人が何で困っているのか』『どうしたら現場の問題を解決できるのか』という”現場起点”でDXを推進すると「ツールを使ってくれ」と言わなくても、利便性が高まる分、スタッフ自ら積極的にシステムを活用していくような態勢になってくれるんじゃないかなと思います。

今後の展望について教えてください。

医療業界ー病院・クリニックのDX事例|なか整形外科|インタビュー

今後の展望は、2つあります。

1つは、処方箋のデジタル化。これまで、処方箋は紙で発行しなさいと法律で決まっていたのですが、2023年の1月26日から電子処方箋が解禁されました。現在活用している『M3デジカル』や『メディカル革命』は、そういった法改正に合わせた変更など、機能が日々アップデートしているので、電子処方箋の発行機能が実装されたらすぐに試してみたいと思っています。

もう1つが、本院のDX推進です。現在当院は、昔からの本院と新設した分院との2拠点があります。今回お話しさせていただいたDXの事例は、基本的に分院のお話しで、本院は元々の制度があった分、分院の半分程度しかDXが進んでいません。
本院は近々移転して新設するので、そのタイミングで分院と同レベルのDX化をしたいというのが2つ目の展望ですね。

医療法人藍整会 なか整形外科
医療法人藍整会 なか整形外科 様|アイコン・ロゴ三ツ星レストランのようなクリニックを目指し、待ち時間や会計の手間を無くすなど、新たな取り組みを多数実施し評価を受ける。治療の質にも定評があり、クリニックでありながら、大学病院以上の治療を提供し、サントリーサンバーズのチームドクターをはじめとしたトップアスリートの治療なども一任されている。新聞やブログサイト、SNSなど、メディア出演多数。
クリニックHP:https://nakaseikei.com/

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