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システム開発には、複数の方法があります。「スクラッチ開発」もそのひとつ。この方法では、自由度の高いシステム開発が実現できます。
ただし、コストや時間の点では懸念点もあるため、企業は事前にメリットとデメリットの両方について理解しておかなければなりません。

そこで今回は、メリット・デメリットを中心にスクラッチ開発についてわかりやすく解説します。他の方法との比較やコストにも触れているので、システム開発検討の際は、是非ご参考になさってください。

スクラッチ開発とは

ゼロからシステムを開発する方法を、スクラッチ開発と呼びます。
システム開発においては、既存のフレームワークやひな形を用い開発を効率化することがありますが、スクラッチ開発ではそれらを使用しません。基盤から全てをオリジナルで開発し、システムを作り上げます。
完全オーダーメイドの方法だと考えるとわかりやすいでしょう。

スクラッチ開発の語源は、英語の「from scratch」にあります。これは、「最初から」「ゼロから」という意味を持つフレーズ。
よって、ゼロから開発を行う方法をこのように呼ぶようになったのですね。

パッケージ開発との違い

「パッケージ開発」も、システムの開発方法のひとつです。

パッケージ開発は、既存のフレームワークやひな形を用いたシステム開発方法です。汎用性に優れたパッケージ(既製品)をベースに、顧客の要望に合わせたカスタマイズを行い、システムを完成させます。
スクラッチ開発と対を成す方法だと言えるでしょう。

ゼロから開発するスクラッチ開発と比べ、パッケージをベースとするこの開発方法は手軽。システム構築の自由度は下がるものの、コストを抑えながら、比較的短時間で開発を行うことができます。

スクラッチ開発費用の相場

スクラッチ開発には、他の方法に比べ巨額の費用がかかります。
仕様やエンジニアの人数、開発期間などによって価格は大きく変わりますが、最低でも500万円は必要でしょう。多機能で独自性も高いシステムであれば、開発だけで数千万円の費用がかかる可能性もあります。

一方、既製ツールであれば数十万円程度で導入が可能。そのため、企業は各手段の費用対効果や自社の予算を踏まえて、開発方法や既製ツール活用の可否について決めなければなりません。

また開発にあたっては、国からの補助金を活用するのもひとつの手です。
「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」など、システム開発・導入に対する補助金は複数設定されています。
ただし、補助金によって支給要件は異なるので、自社で利用可能かどうか事前によく確認するようにしてください。

スクラッチ開発の著作権の帰属先

モノの著作権は、それを作った人または組織に帰属します。
よって、外部の開発会社に依頼して自社システムのスクラッチ開発を行った場合、できあがったシステムの著作権はその開発者また開発会社のものとなります。
ただし、この著作権については、著作者の許諾があれば、その全部もしくは一部を譲渡することは可能です。

著作権については、その帰属をめぐって後からトラブルになることが少なくありません。これを避けるため、著作権の扱いについては、契約時に相手会社との間で明確に取り決めを交わし、契約書に記載しておくことをおすすめします。

スクラッチ開発のメリット

スクラッチ開発には、次の4つのメリットがあります。

  • メリット①:独自性の高いシステムを開発できる
  • メリット②:システムの機能要件を最適化できる
  • メリット③:将来的な拡張性を確保できる
  • メリット④:長期間にわたるシステム使用が可能

順にご説明します。

メリット①:独自性の高いシステムを開発できる

スクラッチ開発の最大の特徴は、自由度の高さです。
基盤からオーダーメイドでシステムを構築するこの方法なら、技術と費用さえあれば、企業が求めるすべての機能や仕様を実現することができます。他にはない独自性の高いシステムを構築し、他社と差別化を図ることも可能でしょう。

メリット②:システムの機能要件を最適化できる

パッケージ開発の場合、基本機能がすでに用意された状態から開発が始まります。この基本機能には一般的によく使われるものが選定されていますが、企業によってはその中に不要な機能が混じることもあるでしょう。使わない機能があることで、システムの使いやすさが低下してしまうことも考えられます。

しかし、パッケージを用いないスクラッチ開発の場合、不要な機能が搭載されることはなく、自社が求める機能だけでシステムを作成できます。
このように、自社の決めた要件定義に実際の機能要件を最適化できる点も、この方法の魅力です。

メリット③:将来的な拡張性を確保できる

スクラッチ開発では、システムの将来的な方向性にも柔軟に対応できます。今後の機能拡張を踏まえて設計を行えば、まずは最小限の仕様でスモールスタートし、その後機能を増やしていくということも可能です。
パッケージでも機能拡張はできますが、その自由度はやはりスクラッチ開発の方が上でしょう。

将来的な拡張性を確保しておければ、事業の可能性は広がります。

メリット④:長期間にわたるシステム使用が可能

スクラッチ開発したシステムには、サービス終了のリスクがありません。そのため、改修を行いながら長期間にわたりシステムを利用し続けることができます。

一方、パッケージ開発の場合は、ベースとなるソフトのサポートが終了すれば、システムを利用できなくなる可能性があります。
開発方法を選ぶ際には、このリスクについても把握しておくべきでしょう。

スクラッチ開発のデメリット

この開発方法には、次のようなデメリットもあります。

  • デメリット①:開発期間が長い
  • デメリット②:開発費用が高額
  • デメリット③:開発会社の選定が難しい
  • デメリット④:自社の担当者に負担がかかる

詳しく見ていきましょう。

デメリット①:開発期間が長い

スクラッチ開発では、ゼロからシステムを構築していくため、開発に時間がかかります。システムの内容にもよりますが、完成までに最低でも半年、長くて数年は必要でしょう。

完成までに時間がかかるため、その間に企業を取り巻く環境が変化したり機能要件が変わったりすることも考えられます。
そのため、移り変わりが激しい分野のシステム開発にこの方法は向きません。

デメリット②:開発費用が高額

ここまでにも触れたように、スクラッチ開発には多額の費用がかかります。開発期間も長いため、数百万から数千万円のコストは必要でしょう。

また、運用にもコストがかかるため、企業には常にある程度の予算確保が求められます。
現実にはこのような莫大なコストに中小企業が対応するのは難しく、スクラッチ開発を選ぶほとんどが規模の大きな企業です。

デメリット③:開発会社の選定が難しい

開発会社や技術者によって、システムの出来は変わります。
システム開発の依頼者である企業は、自社のニーズを的確に実現してくれる開発会社および技術者を選ばなければなりません。特にスクラッチ開発の場合、そのスキルやノウハウが重要になります。

とはいえ、事前に相手のスキルやノウハウを見抜くのは困難でしょう。実績や口コミからある程度の情報を得ることは可能ですが、それも限定的です。

このような委託会社の選定の難しさは、この方法の懸念点です。

デメリット④:自社の担当者に負担がかかる

スクラッチ開発は自由度が高い分、その要件定義を固めるまでの作業、そして検証・改善していく作業の負荷が大きくなります。開発者だけではなく、自社の担当者にも大きな負担がかかるでしょう。

負担の偏りを防ぐには、システム開発・運用の専門チームを設置し、その中での役割分担や情報共有を徹底していくことが重要です。

スクラッチ開発に向いているケース

上記の特徴を踏まえると、スクラッチ開発は次のような企業ニーズにおけるシステム開発に向いています。

  • 独自性の高いシステムを構築したい
  • コア業務に利用したい
  • 予算に余裕がある
  • 納期を急いでいない
  • 構築後、頻繁に機能追加や改修を行いたい
  • 既存システムに合わせて変更できない業務に使いたい

つまり、「予算や納期に余裕があり、自由自在にシステム構築を行いたい」場合に、この開発方法は向いています。
逆に、汎用的なシステムを求めていたりコストを抑えたかったりする場合には、パッケージ開発が選択肢に上がります。

スクラッチ開発とパッケージ開発を比較する際のポイント

システムの開発方法に迷った際には、次の2つのポイントにおいて、自社のニーズと各方法の特徴を比較してみましょう。

独自システムの必要性

スクラッチ開発は、独自性の実現に優れていますが、その分コストや時間はかかります。よってシステム開発にあたっては、まず「独自性は本当に必要か」という点について考えなければなりません。

汎用的なシステムで十分やりたいことが実現できるのであれば、無理をしてスクラッチ開発を選ぶ必要はありません。
この判断を行うには、既存パッケージの機能についても把握しておく必要があります。

何を優先するか

システム開発にあたっての優先項目とその順位についても、事前に決定しておきましょう。
例えば、独自性や将来的な拡張性を優先するのであればスクラッチ開発が向いていますし、時間やコストを最優先とするケースであればパッケージ開発向きでしょう。

これらの開発方法は特徴が大きく異なります。担当者はそれを把握した上で、自社が優先するニーズに合う方法を選ぶ必要があります。

まとめ

開発方法によって、実現できるシステムやそのコスト、開発期間は異なります。
スクラッチ開発であれば、あらゆるニーズに柔軟に対応でき、自由度の高いシステム構築ができますが、コストや時間はかなりかかります。一方のパッケージ開発であれば、自由度が下がる分コストや時間も抑えられます。

このように開発方法の特徴は一長一短です。その特徴を把握し、自社ニーズに合う方法を選ぶことが、システム開発にあたっての最初の課題だと言えるでしょう。