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世界的なDXの流れに乗り、日本でも多くの業界でDXが進んでいます。
その中でも、DXが喫緊の課題となっているのが製造業。製造業はDX推進においてさまざまな課題を抱えていますが、より大きい将来的なリスクを避けるためには、これらの課題を解決し、DXを推進する必要があります。
そこで今回は、DX推進の課題と進め方、具体的な成功事例など、製造業のDXについて詳しく解説していきます。
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DXとは
製造業のDXに触れる前に、まずはDXの意味について確認しておきましょう。
DXは、デジタルトランスフォーメーションの略で、「デジタル技術の活用により企業が行うビジネスモデルなどの変革」を指す言葉です。
経済産業省は、DXを次のように定義しています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。”
(引用:経済産業省『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン 平成30年12月』より
今後、日本企業が市場での競争力を維持するためにはDXが必要だとされています。経済産業省はDXに関する情報発信やDX推進企業に対する補助金・税制優遇などの取り組みを通して、企業のDXを後押ししています。
製造業でDXが重視されている理由
現在の製造業では、以前にも増して、DX推進が重要視されています。
その大きな理由は、「2025年の崖」が目前に迫っているためです。
2025年の崖とは
部門ごとに構築されたり過剰にカスタマイズされたりして、複雑化・ブラックボックス化したレガシーシステム(既存システム)の問題を解決し、経営改革を行わなければ、企業は、「データ活用しきれないことによる市場競争での敗北」「レガシーシステム維持管理にかかる多額の費用」「情報セキュリティリスクの高まり」といったリスクを負うことになる。結果、2025年以降1年で最大12兆円の経済損失が発生する可能性があるという、経済産業省によるレポート。
このような危機が迫っているにも関わらず、製造業のDXは思うように進んではいません。
総務省のデータによると、製造業でDXを実施している企業の割合は、22.8%にとどまります。
(総務省「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究(2021年3月)」より)
なぜ製造業のDXが進んでいないのかというと、製造業にはDX推進にあたって規模や階層による多種多様な課題があるためです。
製造業の階層の違いとは
製造業はメーカーとその製品を製造するサプライチェーンにより構成されます。形は様々ありますが、基本的にはTier1、Tier2、Tier3と分けられます。
基本的な納入単位がそれぞれの工程で異なり、Tier1ではメーカーからの要望となるユニット単位での納入が求められる層が主体となり、自社で加工を行うだけでなく、顧客に求められる部品の取りまとめが重要です。自社のシステムを保有しているだけでなく、顧客が持つ生産システムの枠組みの中で生産を行うことも多いです。
一方Tier2から続く階層の役割は多様です。多品種を同時に対応する必要がある前工程や、後処理となる表面処理工程など、先述のTier1のみでは加工ができない工程を担当します。中には町工場と呼ばれる職人企業がこの層に多く在籍しています。
様々な取引先との掛け持ちをする中で決まった形の受注が難しい背景と、Tier1から仕事が細分化されていく構造から、ピラミッド層の下に行けば行くほど人数規模が小さくなります。これにより、そもそもレガシーシステム自体を自社で持たない企業の割合が増えてきます。製造業においてはこの層に属する30名以下の事業者数が75%を占めます。(経産省「工業統計調査2020年産業別統計表(2021年5月28日)」より)
つまり、DXと呼ばれる取り組みも多様な手法が必要になってくるのです。
製造業DXの課題
DX推進にあたって、製造業は次のような課題を抱えています。
- 人材不足またはリソース不足
- 属人的改善による部分最適化
- 設備の老朽化や規格の不統一
- ITが活用されていない
順に見ていきましょう。
人材不足またはリソース不足
中小製造業においては、慢性的な人材不足が発生しています。
人手不足は業務のデジタル化によって改善できる場合もありますが、そもそもデジタルシステム導入に割く人手人材が不足していたり、DXに取り組むリソースとなる経営資源が限られていたりすることから、DX推進に取り組めていないと言うことも考えられます。
属人的改善による部分最適化
属人的改善による部分最適とは、業務の属人化により部分的な最適化が行われている状態のこと。
製造業では業務の属人化によって、業務内容がブラックボックス化してしまっている例が多く見られます。
業務がブラックボックス化すると、業務の現状や課題が明るみに出ず、これはDX推進の足枷となります。
設備の老朽化や規格の不統一
製造業では、古い設備を使用している企業が少なくありません。
また、比較的新しい設備を導入している場合でも、上述のTier1、Tier2のように業界としてピラミッド構造が存在するため、上流工程と下流工程で使用するメーカーが複数種類に分散し、規格に不統一性が生まれやすいなどの状況も考えられます。
こうした状況下では、各システム同士の連携ができず、データや設備を十分に活用することもできないことから、うまくDXが進められていないパターンも散見されます。
規格統一のための設備変更や新システム導入には手間と時間をかけたテストが必要になることから、導入を先延ばしにしている企業も少なくはないでしょう。
ITが活用されていない
製造業では、IT活用が積極的に行われない傾向にあります。その理由としては、「コストの確保が困難であること」や「IT活用によるメリットを把握できていないこと」が挙げられます。
IT導入には多額の費用がかかります。さらに、ITリテラシーに富んだ人材が少ない環境では、DXを主導する人がおらず、そのメリットを伝える人もいません。このことから、スムーズにDXを進めることが難しいのです。
製造業DXの進め方
製造業でDXを実現させるには、然るべき手順のひとつひとつを順にクリアしていく必要があります。
また、スモールスタートから徐々に範囲を広げていくことも、ポイントのひとつ。
ここでは、製造業におけるDXの進め方を、大きく4つの手順でご紹介します。
ビジョンや課題の明確化・共有
DX推進にあたっては、まずDXにより実現したいビジョンや解決したい課題を明確化し、社内共有することが大切です。この時、現場をきちんと把握し、現状とビジョンに乖離が生まれないよう気をつけましょう。
また、DX推進は、経営者がコミットメントを持ち、リーダーシップを取って進めていくことも重要です。
データ収集・分析
ビジョン実現や課題解決のためにはどんなデータが必要か、そのデータをどう活用するか、施策を検討していきます。このプロセスはデジタルに対する知見がないと難しいですが、人材確保が難しい場合には、コンサルティングサービスを利用するのもひとつの方法でしょう。
収集したデータは活用できる状態に分析し、決めた活用方法に則って利用します。
システム導入による業務効率化
次に、全体の業務プロセスを見直し、業務効率化を図ります。効率の悪い業務プロセスを、システム導入などによって改善していきましょう。
ただし、システム導入はスモールスタートが鉄則。まずは小規模導入で様子を見るようにしてください。
ビジネスモデルの変革
ここまでの流れを受け、デジタル技術の活用によるビジネスモデルの変革も視野に入れましょう。先述の通り、製造業は業界としてピラミッド構造があるため、すぐに自社だけでビジネスモデルを変革することが難しい場合もあるかもしれません。業務内容のデジタル化に伴い、可能なポイントから組織や企業文化、風土などの見直しも実行しましょう。
これらの取り組みは、それぞれ実行するごとに効果検証し、課題を改善しながら、より良い形を求めていくことが重要です。
ビジネスモデルを変革していく際には、取り組みを主導するDXチームを発足させることも大切。DXチームをメインに、経営者もコミットメントしながら、企業全体で同じ方向性を持ってDXを推進するようにしましょう。
中小製造業DXの取り組み事例
最後に、自らの事業環境に合わせたビジネスモデルの変革を目指し、DXに取り組む製造業の事例をご紹介。本章では、中小製造業の事例2つに絞ってご紹介します。
株式会社丸菱製作所が打ち出した新事業
「技術を取引する製造業のフリマサイト『ASNARO(アスナロ)』」
愛知県春日井市で大型金属製品の一貫加工を得意とする同社は、中小企業間のリソース共有を行うプラットフォームを開発し、他社にそのシステムを開放することで、自社の経営課題の解決だけでなく、新たなビジネスモデルを展開しました。
①課題
既存主要顧客の受注の急激な負荷増減による不安定な稼働状況や、工程ごとの負荷量の違い、顧客開拓を行うことで発生する生産リソースの過不足を課題にしていました。
②取り組み
工程ごとに受発注を行うことができる中小企業間のBtoB ECサイトを立ち上げることにより、工場に発生する余剰生産リソースや逆に不足するリソースをタイムリーに共有することが可能になりました。
③成果
既存顧客との取引における不安定稼働の穴埋めを行うことで、工場の稼働率の向上を行うことができることや、徒に顧客開拓を行ってきた従来の営業方式を変更し、自社の強みや空き工程で受注することで利益の改善を図っています。またこのプラットフォームを他社を巻き込んで展開することにより既存事業との相乗効果を生み出しています。
サービスサイトURL:https://asnaro.co.jp/
HILLTOP株式会社が生み出した
「自動加工プログラム作成サービス『COMlogiQ(コムロジック)』」
京都府宇治市にて1~数個と極めて少ない生産数のアルミ合金製品の加工を行う同社は、自社の加工実績に対し機械学習を応用することで加工プログラムの作成をほぼ自動化したシステムを開発し、さらに外部へのサービス提供を開始しています。
①課題
プログラムの作成能力が事業を左右する同社では、きわめて小さいロットで受注する加工プログラムの時間短縮や、熟練者でなくても使用できる手法が必要でした。
②取り組み
これまでも自社開発を行ってきた「HILLTOPシステム」で加工プログラム作成の所要時間を大幅に短縮するとともに、加工の熟練者でなくても扱える取り組みをしてきましたが、「COMlogiQ」は、そのHILLTOPシステムをさらに進化させ、より広い範囲の作業を自動化し、人手をかけずに済むようにしました。
③成果
自社の経営課題を解決することで、少量の受注を大量に行うことで発生するプログラムの作成負荷を大幅に減少させるだけでなく、そのソリューションを他社が利用できるサービスとして展開することで新たなビジネスモデルを構築しています。
サービスサイトURL:https://comlogiq.hilltop21.co.jp/
大手製造業DXの成功事例
続いて、大手製造業のDX成功事例2つを確認してみましょう。
トヨタ自動車株式会社の「工場IoT」
トヨタ自動車株式会社は、「工場IoT」というDX推進への取り組みにより、課題を解決へと導きました。
①課題
製造・顧客データを技術開発へ、タイムリーにフィードバックすることができていない。
②取り組み
デジタルデータを一元管理できる情報共有基盤として「工場IoT」を開発。
社員のデジタル活用を促すため、教育支援の仕組みや便利ツール、高いセキュリティ環境を用意。
③成果
各事業部や工事で「工場IoT」を用いたプロジェクトを開始。取り組みの数が増えるにつれ、費用対効果が向上した。
この成果を受け、付加価値向上のためのデジタル化に着手し始めている。
株式会社アイデンの「IWS」
株式会社アイデンは、「IWS」というDX推進への取り組みにより、課題を解決へと導きました。
①課題
配線作業が職人の知見に依存し、属人化している。
作業プロセスにおける分業体制が整っていない。
②取り組み
作業プロセスごとの必要作業を標準化し、それを可視化できるデジタルツール(IWS)を開発。
業務を部分的に機械化し、効率化。ベテラン職人には、付加価値の高い業務に専念してもらうことに。
③成果
データ活用・機械化により、フロントローディングや生産性向上に成功。
作業および作業量の明確化によって、分業体制の構築や進捗管理、材料量の事前把握が可能に。作業の標準化は、海外拠点への新規参入の成功にも一役買うこととなった。
(参考:株式会社アイデン『IWS』、経済産業省『製造業DX取組事例集』)
まとめ
ご紹介したように、企業が市場競争力を維持し、リスクを回避するためには、経営者が先頭に立ったビジョンとスピード感のあるDX推進が必要です。製造業であっても、他の業界であっても、DX推進の取り組みは、積極的に行なっていかなければなりません。
製造業がDXを成功させるには、課題と現状を把握した上で、それらのDXによる解決を模索し、企業全体でDX推進に向け取り組んでいくことが大切です。
また、DXによって生まれた新たな視点は、中小製造業において新しいビジネスを生むきっかけにもなるかもしれません。
DXへ取り組むにあたっては、経済産業省のガイドラインなども参考にすると良いでしょう。
三菱電機株式会社のエレベータ部品・工作機械部品の製造を行う、愛知県春日井市に所在する創業70年100名規模のTier1サプライヤ、丸菱製作所の三代目跡取り。
メーカーとの一次取引を行うため、メーカーとの技術営業を行う中で、Just in Time 生産方式をはじめとした日本を代表する生産技術や生産管理の基礎を学ぶ。
日本の中小製造業の大多数がとる既存主要顧客の一本足経営の仕組みではこの先モノづくりが縮小していく危機を感じ、中小製造業の技術を既存のサプライチェーンから開放し、最大限活用する仕組みを開発。技術を出品する製造業のフリマサイトASNARO(アスナロ)を2022年4月より打ち出し、下請け仕事ではなく自社の技術を商品として販売する技術のECサイトを立ち上げた。
経営資源が限られる中小企業に対し、明日から無料で始められるDXと銘打って、誰もが参加できるプラットフォームになるべく愛知県から拡大中。事業スタートから現在320社の登録があり、今までスポットライトが当たらなかった小規模の製造業約400社を回る。
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経済産業省を始めとする様々な調査で、企業のDX化成功率は10%を下回るとの報告が多くあります。
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