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DX(デジタルトランスフォーメーション)が注目を集めている昨今、企業の中には「DXを推進する方法が分からない」「社内にDX人材がいない」といった課題を抱えている場合も多いでしょう。
本連載では、DX推進に成功した企業に、その進め方や課題、苦悩などをインタビュー。第2弾となる今回取り上げるのは、医療法人社団正恵会 ディオクリニック様です。
『医療ダイエット』というポジションを確立し、わずか3カ月という短期間で効果が期待できる独自プログラムなどが評価され、2020年11月の創業から23年6月現在までの約3年で12店舗、従業員数300人と日本一の規模を誇るクリニックを展開。23年度末までには、27店舗展開、従業員数800人と、2倍以上の大幅な成長も視野に入れています。
破竹の勢いで成長を遂げる同社ですが、創業当初は、問診票・カルテ・契約書など情報管理の多くを紙ベース行っており、書類や情報の管理がおろそかになっているなど、業務の進行に頭を悩ませていました。そんな同社が社内外の多くの手続きをデジタル管理で一元化し、残業時間の短縮など、業務効率を大幅に改善して現在に至るまでにどのような苦悩や工夫をされてきたのか。理事 兼 統括院長の藤井様、広報の鈴木様に伺ってきました。
大量の紙で情報管理されていた創業期
DX推進に注力するようになったきっかけを教えてください。
DX推進に注力したのは、業務拡大がきっかけです。
もともとは、問診票やカルテ、契約書などほとんどの情報を紙ベースで管理していたんです。あとは、スタッフが各自で作ったエクセルとかですね。なので当時は「あの書類はどこだ」とか「前回の問診の結果が記入されてない。担当者は誰だ?」みたいな状況がよく起こっていて、お客様対応に注力することができない状態でした。ただ、課題には感じつつもなかなか対処に踏み切れていなかったんです。
そんな中、コロナ禍の影響が追い風になったこともあって、想定以上に多くのお客様にご来店いただけたことで、割と早い段階で店舗数2桁にまで成長することが予想できたんです。そのタイミングで「多店舗展開する前に、この情報管理の仕組みを何とかしよう」とDX推進に注力し始めたのが経緯ですね。
DXを始めるにあたって、どんなことから着手されたんでしょうか?
弊社の場合は、改善した際に最もインパクトが大きいポイントを考えた結果、診察室の業務改善から始めました。クリニックの診察室は飲食店の座席数と似ていて、上限が決まっている分、その制限の中でいかに業務効率を改善して接客時間を短くするかが、顧客満足度にもつながりますし、売上拡大にも直結してくるんです。
そこでまずは「紙ベースの情報管理だと、記入が大変」「記録の管理にも、閲覧にも、時間がかかる」といった声を受けて、紙に書くものは『メディベース』というカルテや契約書なんかをペーパーレス化できるツールで管理することにしたんです。これだけでも大幅に効率を改善できましたね。
他で言うと『ボディグラム』や『インボディ』と呼ばれる身体サイズや体成分の測定するツールの導入もインパクトが大きかったです。導入前まではメジャーや体重計などで1つ1つ計測していたので非常に時間がかかっていたんですが、ボディグラムやインボディは、撮影した画像からAIが一瞬で数値をはじき出すので、こちらも大幅な効率化につながりました。
複数のツールを活用されてますが、情報が分散して、逆に管理が煩雑になるなどの問題はなかったのでしょうか?
各ツールから収集したすべてのデータを、Salesforceで一元管理しているので、特にそういった問題は起きていません。もともと、予約や契約から診察記録まで、すべての情報をSalesforceで一元管理しようということは決まっていたので、導入の際には『SalesforceとAPI連携できるか』という点を基準にツールを選定するようにしていたんです。そのおかげで、今はSalesforceを開けば、目の前のお客様の目標体重や施術状況はもちろん、弊社を知っていただいたきっかけなんかまでひと目でわかるようになっているため、お客様対応の質が格段に向上しました。
ツール活用が定着するまでに苦労や反発はなかったんでしょうか?
ありがたいことに、弊社の場合はツールの活用に対して、マイナス意見はほとんどありませんでした。2020年に創業したばかりで若いスタッフが多いぶん、新しいものが好きだったり順応が早かったのもあると思います。
ただ、個人的には業務改善への影響度が高い上で「スタッフの方から提起されていた問題を解決するツール」の導入を優先的に進めたのも大きいと思ってます。現場が課題感を感じていると話してくれたことに解決策としてツールを導入したわけですから、むしろ前向きに活用しようと心がけてくれてましたね。
お客様も「診察時間が短くて済む」「施術がスムーズ」と高く評価していただいて、ご紹介をくださる方が増えたんです。『ダイエット』というコンプレックスが絡むことなので、施術が効率的でスムーズに終わるという点はかなりプラスに働きました。
DX推進が進んだ現在の状況
どのツールをどんな用途で活用しているか、具体的に教えてください。
現在の各ツールの活用状況としては下記のようになります。
Salesforceを主軸にして、全ツールからのデータがAPI連携しているので、Salesforceを見ればすべての情報がひと目でわかるという状況ですね。あとは、上記にくわえて社内コミュニケーションツールとして『Slack』を使っています。
DX推進の反響はいかがでしょうか?
先述のように、下記のようなポイントでスタッフにもお客様にも喜んでもらえてます。
- Salesforceの一元管理体制で、情報の記録や管理の抜け漏れが無くなった。
- ペーパーレスになって、情報を記載していた紙の紛失などの問題が無くなった。
- AI測定ツールの活用で、施術や診察の時間が大きく短縮できた。
結果として、業務効率・売上・サービスの質などが上がったことで、
- 残業時間がほぼ0になった。
- 満足度が上がり、紹介が増えた。
といった状況も達成できました。
23年度は店舗数・社員数ともに前年の2倍以上の拡大を行っているところですが、現在の手法を確立・普及してから新店舗で「情報の管理が大変」といった声もほぼ0なので、上手く機能しているのかなと思います。
成功した秘訣には、何があると思いますか?
現場の困っていることに目を向けるのが大切だと思います。具体的に弊社が行った手順として、まずは現場の困りごとのたな卸しです。それから、その困りごとに対して「もっと簡略化できる方法はないか?」と考えました。そうすると、今の時代、大体その解決策となるツールやシステムなんかが既に販売されているので、それを吟味して導入していくという形です。
現場の困りごとを解決するようなシステムの導入をすれば、上層部からの指示で『やらされてる感』なども無くなって、前向きに受け入れてくれるんじゃないでしょうか。弊社がDXを推進していく過程で、反発なども無くスムーズに行えたのは『現場の困りごとの解決』に注力したのも大きいと思っています。
今後の展望について教えてください。
現場のDXはある程度進んだので、今後は本社機能のDX推進として『CRM』の活用を進めていきたいです。たとえば、お客様が欲しい情報や今悩んでいることを解決するようなコンテンツをLINEなどで配信することがその一例ですね。医療美容の専門家としてデジタル上でもダイエット成功に役立つ情報などを発信していくことで、現場でもより質の高いサービスの提供が可能になると思っています。そうすれば、お客様の満足度も向上しますし、巡り巡って売上の拡大にもつながるかなと。なので、今現在はCRMの活用に力を注いでいます。
2020年11月に創業し、『医療ダイエット』というポジションを確立。過度な食事制限や激しい運動、手術などを必要とせず、なおかつ3ヶ月という短期集中で効果が期待できる独自プログラムなどが評価され、創業から23年6月現在までの約3年で12店舗、従業員数300人と日本一の規模を誇るクリニックを展開。23年度末には27店舗展開、従業員数800人と、2倍以上の大幅な成長も視野に入れるなど、破竹の勢いで成長を遂げている。
クリニックHP:https://dioclinic.jp/
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