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近年、越境ECの市場規模は拡大しています。多くの企業が、国内だけでなく、海外に向けて自社ECを展開するようになりました。
その背景には、越境ECにより企業が得られる複数のメリットがあります。

では、越境ECのメリットとは何なのでしょうか。また、デメリットはあるのでしょうか。

今回は越境ECのメリット・デメリットについて詳しく解説します。

越境ECとは

海外に向け、インターネットを通じた通信販売を行うECサイトを、「越境EC」と呼びます。

越境ECでは、国内だけでなく、海外に住む顧客もターゲットにすることが可能です。これによりターゲットの増加および売上の向上を見込めることから、越境ECを開始する企業は増え、その利用者も増加してきました。
特に近年のコロナ禍における海外渡航の困難は、越境ECの追い風となりました。日本へ買い物に来たくても来れない外国人の需要を、満たすことができるためです。

インターネットが世界的に普及した現代において、越境ECの市場規模は増加しています。この流れは今後も続き、ショッピングはよりシームレスなものになっていくでしょう。

越境ECの市場規模

次に、越境ECの市場規模についてみていきましょう。

前述の通り、越境ECの市場規模は拡大傾向にあります。経産省のデータから、日本・中国・アメリカの3カ国間における越境ECの市場規模とその推移をまとめた以下の表をご覧ください。

越境ECの購入金額(2019年)越境ECの購入金額(2020年)越境ECの購入金額(2021年

日本

3,175億円3,416億円3,727億円
中国3兆6,652億円4兆2,617億円

4兆7,165億円

アメリカ1兆5,570億円1兆7,108億円

2兆409億円

この表からは、どの国においても越境ECの市場規模が大きく拡大していることがわかります。
また、他2国に比べ中国の購入金額はかなり大きいですが、そのうち中国の消費者が日本の越境ECから購入した金額は2兆1,382億円にものぼります。中国の消費者は、日本の越境ECを多く利用しているのですね。

ちなみに、2021年における日本国内のBtoBにおけるEC市場規模は372.7兆円、またBtoCにおけるEC市場規模は20.7兆円でした。これらの数字と比較すると日本の越境ECの市場規模はまだ小さいですが、その勢いは今後さらに増していくでしょう。

越境ECのメリット

越境ECによって、企業は次のようなメリットを得ることができます。

  • 海外の顧客を得られる
  • 競合が少ない環境でビジネスを展開できる
  • 商品を効率よく販売できる
  • 実店舗よりも簡単にビジネスを展開できる

4つのメリットについて詳しくご説明します。

【メリット①】海外の顧客を得られる

海外に向けてサービスを展開することで、海外の顧客を得られることが、越境ECの大きな魅力です。国内に限定するよりもターゲットの母数が多くなるため、その分売上の向上も見込めます。

ニーズに合わせて対象国を絞れば、効率的に顧客を獲得することも可能でしょう。

【メリット②】競合が少ない環境でビジネスを展開できる

国内向けでは競合が多いECサイトも、ターゲットを海外に向ければ、競合を減らすことができます。国内ではよくあるコンセプトや取扱商品のECサイトでも、海外では珍しいため、簡単に独自性を打ち出し、多くの人から注目してもらうことが可能です。

国内のECサイトで独自性を打ち出す難しさを踏まえると、この点も越境ECのメリットだと言えるでしょう。

【メリット③】商品を効率よく販売できる

多くの国では、日本の商品が注目されています。品質や価格、独自性などの面から、日本の商品を購入したいと考えている人は少なくありません。

越境ECでは、「日本の商品が欲しい」と考えている人をターゲットにし、商品を効率的に販売することができます。特に日本人気が高い国に的を絞れば、より効率に優れたビジネスができるでしょう。

【メリット④】実店舗よりも簡単にビジネスを展開できる

越境ECによる海外に向けた商品販売は、実店舗を構えるよりも手軽です。
現地に実店舗を出店するとなると、多額のコストや膨大な時間が必要ですが、越境ECでの出店ならコストや時間はほとんどかかりません。越境ECに対応するASPを利用すれば、簡単な作業でサイトを構築し、海外への販売を始めることができます。

この点は、経営がうまくいかなかった場合のリスク回避としても有効です。

越境ECのデメリット

越境ECには、メリットだけでなく、次のようなデメリットもあります。

  • 配送コストが高い
  • 国によって施策を変える必要がある
  • 決済方法を精査する必要がある
  • 言語の壁がある

越境ECの開設にあたっては、これらのデメリットがあることを理解し、対策を取らなければなりません。ここでは、各デメリットの内容を解説します。

【デメリット①】配送コストが高い

現地に商品を保管する倉庫を持っているという企業はあまりないでしょう。日本国内から海外に商品を発送するとなると、当然配送コストは嵩みます。

配送コストは基本的に顧客負担となりますが、この負担の大きさは販売機会の喪失に繋がります。コスト負担の大きさから、顧客が商品の購入をあきらめてサイトを離脱してしまう可能性があるためです。

【デメリット②】国によって施策を変える必要がある

越境ECでは、国によって施策を変える必要があります。国ごとに、ECに関する法律が異なるためです。例えば、関税やライセンス、個人情報の取り扱いなど。

法律に違反した企業はペナルティの対象となります。
それを防ぐためにも、企業は国ごとの法律に対応し、慎重なEC運営を行わなければなりません。

【デメリット③】決済方法を精査する必要がある

越境ECでは、決済方法も精査する必要があります。

決済方法は多様なほど顧客のニーズに対応しやすいですが、ラインナップを増やす程にコストは嵩みます。Web決済が普及していない地域もあるでしょうし、また、海外発行のクレジットカードの利用ではトラブルが起きやすい点にも注意しなければなりません。

決済方法を決める際には、その国におけるさまざまな状況を勘案することが大切です。

【デメリット④】言語の壁がある

海外に向けて商品を販売するとなると、そのサイトは当然その地域の言語に対応していなければなりません。多言語対応できるシステムは多いので、この機能を利用すれば、ECサイト自体の言語対応は問題ないでしょう。

しかし、顧客からの問い合わせに現地の言語で対応するのは、かなりハードルの高い作業です。
とはいえ、商品を販売するにあたって問い合わせ対応は欠かせないもの。サイトを運営する企業は、翻訳機の利用や言語に長けた従業員の確保により、多言語での問い合わせに対応できる体制を整えておく必要があります。

越境ECを展開する方法

越境ECを展開するには、次の4つの方法があります。

  • 【方法①】自社ECサイトを構築する
  • 【方法②】海外向けのECモールを利用する
  • 【方法③】対象国に自社の倉庫を設ける
  • 【方法④】代行販売者に販売する

まず挙げられるのが、自社の越境ECサイトを構築し、商品を販売する方法。サイト構築には、手軽なASPから手間のかかるフルスクラッチまで、複数の方法があります。どの方法を選ぶかで、できることやコストは大きく異なるため、ニーズに合わせて選ぶといいでしょう。

また、海外向けのECモールに出店するというのもひとつの方法です。モールへの出店は、他の方法ほど集客に力を入れなくても、顧客に商品を購入してもらいやすい点がポイント。集客を楽にしたい企業におすすめです。

さらに、リソースに余裕がある場合には、現地に倉庫を設ける方法も検討しましょう。この場合、注文は国内で受け、発送は現地で行うため、配送コストを抑えることが可能です。
配送自体もスピーディーになり、顧客満足度は向上するでしょう。

代行販売者を間に入れて商品を販売する方法もありますが、この方法では値下げ交渉や手数料の支払いにより利益率が低くなることが多いので注意してください。

越境ECの成功事例

最後に、実際に越境ECに成功した企業の事例を3つご紹介します。

【事例①】ダイアナ株式会社

婦人靴を販売するダイアナ株式会社では、2011年から越境ECに取り組み、海外に販路を広げています。

対象は国際郵便が届く国全てですが、注文の9割は中国から。メイドインジャパンにこだわった商品作りはもちろん、アジア系の人々に馴染みやすい足型が、海外で選ばれる理由となっています。

また、越境ECではビジュアルではなく、商品ラインナップを前面に押し出したデザインにし、わかりやすさや親近感を重視。多言語対応も行いました。
現在もPDCAを回しながらより良い越境ECの実現を目指しており、今後はよりグローバルなマーケティング施策にも力を入れていくそうです。
(参考:https://www.ecbeing.net/contents/detail/101

【事例②】メーカーズシャツ鎌倉株式会社

シャツの製造から販売までを行うメーカーズシャツ鎌倉株式会社は、2012年にニューヨークに実店舗をオープン。メイドインジャパンの高品質なシャツは評判が良く、2015年には2号店をオープンし、海外顧客向けのECサイトも運営して、越境販売に力を入れてきました。

同社は当初、在庫管理がネックとなり、海外向けECの商品ラインナップを十分に用意できないという問題を抱えていました。しかし、国内ECとの在庫管理の一元化により、この課題を解決。ドル建て決済にも対応し、海外の顧客がより快適に利用できるよう、サイトをリニューアルしました。

越境ECでも国内と同じようなサービスを提供できるよう、また商品を触ったことない人にも興味を持ってもらえるよう、同社はECにおけるより良い表現を模索しています。
(参考:https://www.ecbeing.net/voice/makers_shirts.html

【事例③】株式会社グラニフ

オリジナルのTシャツを取り扱う株式会社グラニフも、越境ECに成功している企業のひとつ。英語表記や海外配送に対応し、海外に販路を広げています。

同社の越境ECでは、購入金額に応じた送料無料サービスやポイントサービスを展開。顧客の負担を軽減できるサービスで海外通販のハードルを下げ、高額な配送コストという越境ECの課題を解決しました。

販売しているTシャツはどれもユニークで、特別感のあるものばかり。人気キャラクターとのコラボレーションや限定デザインも多く、それが海外の顧客から見ても魅力になっていると考えられます。
(参考:https://www.ecbeing.net/contents/detail/122

まとめ

越境ECには、メリットとデメリットがあります。それを理解し、デメリットへの対策をきちんと行えば、越境ECは企業にとって、売上向上に繋がる重要な販売手段となるでしょう。

ただし、越境ECを開業し、軌道に乗せるまでにはある程度の時間が必要です。すぐに利益が出ると考えていると資金繰りが苦しくなる恐れもあるので、余裕のある計画策定を心がけましょう。