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ネットショッピングの利用が一般的になるにつれ、支払い方法も多様化しつつあります。
そのひとつが後払い決済という方法。商品の代金を後から支払うこの方法は、クレジットカードを持たない顧客層やクレジットカード情報をネット上で入力することに不安を感じる層にも支持され、その市場規模は拡大傾向にあります。

後払い決済は、顧客だけでなく、EC事業者側にとってもメリットがある決済方法です。
そこで今回は後払い決済について、メリットやデメリットを中心に、その概要をご紹介しましょう。

後払い決済とは

後払い決済とは、ECサイトで商品を購入した顧客が、商品を受け取った後に、商品の代金を支払う後払い型の支払い方法。購入者は請求書を用い、銀行や郵便局、コンビニなどで商品代金を支払うことができます。

後払い決済はクレジットカード不要で後払いができることから、クレジットカードを持たない層に支持され、その市場規模は拡大傾向にあります。
最近では後払いアプリも登場しており、後払い決済サービスは今後も広がりを見せていくでしょう。

後払い決済の仕組み

後払い決済では、購入者とEC事業者の間に、後払い決済サービスを提供する決済機関が入ります。その仕組みを知るため、後払い決済の流れを見ていきましょう。なお、後払い決済サービスには、決済機関がEC事業者に購入者の代金を立て替える立替え払い型 の場合とそうではない場合がありますが、以下では主に「立替え払い型の後払い決済サービス」について説明します。

◆後払い決済の流れ

  1. 購入者が決済機関の加盟店であるEC事業者のサイトで商品を購入し、決済方法として後払い決済サービスを選択
  2. EC事業者から決済機関に購入者の取引情報を通知
  3. 決済機関が購入者の与信審査を行い、EC事業者に立替え承諾を通知
  4. EC事業者が購入者に商品を発送
  5. 決済機関から購入者に対して請求書を送付
  6. 決済機関が代金を立て替え、EC事業者に支払う
  7. 購入者が決済機関に対し代金を支払う

購入者が後払いを選んでも、立替払い型の後払い決済サービスの場合は、決済機関が一旦代金を立て替えますのでEC事業者への入金が遅くなることはありません。
後払い決済は、EC事業者と購買者双方にメリットのある支払い方法だと言えるでしょう。

EC事業者が後払い決済を導入するメリット・デメリット

後払い決済サービスの導入には、 EC事業者にとってのメリットが多数あります。またその一方で、注意しておきたいデメリットも存在します。
ここでは、後払い決済サービス導入におけるEC事業者のメリット・デメリットを具体的に挙げていきます。

メリット

まずは、後払い決済サービス導入におけるEC事業者の3つのメリットについてご説明します。

顧客層拡大による売上アップ

ネットショッピングはクレジットカードで決済することが多いですが、全ての消費者がクレジットカードを所有しているわけではありません。中には、クレジットカードを持っていないために、ネットショッピングを諦めている方もいるでしょう。

後払い決済が支払いの選択肢にあれば、クレジットカードを持っていない人もネットショッピングを行うことができます。これにより顧客層は広がり、企業は売上を向上させることが可能です。

簡単手続きでカゴ落ち対策

商品を選んでカートに入れても、支払い手続きでクレジットカード情報の入力が必要になると、「クレジットカードが手元にない」「面倒くさい」「クレジットカードの個人情報をネット上で入力したくない」などの理由でサイトを離脱してしまう顧客は少なくありません。面倒な入力手続きにより、このようなカゴ落ちが発生し、企業は売上機会を逃してしまっています。

しかし、クレジット支払いと異なり、後払い決済には面倒な入力手続きがいりません。カードが手元になかったりカード情報の入力が面倒だと感じる顧客に対し、後払い決済という選択肢があれば、カゴ落ちを防止することができます

支払い関連の業務負担軽減

後払い決済では、支払い関連の手続きを決済機関が代行して行います。そのため、企業は顧客に請求書を発行したり入金管理や督促業務を行ったりする必要がなく、業務負担を減らすことができます。

デメリット

次に、後払い決済サービス導入におけるEC事業者のデメリットを2つ見ていきましょう。

未回収リスクが発生

商品を届けた後に顧客から代金を支払ってもらうため、後払い決済サービスにはどうしても代金未回収のリスクが付きまといます。そして、代金未回収のリスクに加え、未納代金を回収するための顧客への督促その他法的手続などの負担リスクもあります。

とはいえ、こちらについては立替え払い型の後払い決済サービスを導入することでリスクを回避できます。この場合は決済機関がEC事業者のために顧客への請求金額を先に立て替えて支払いますので、決済機関が督促等の手続も代行するためEC事業者がリスクを負う必要はありません。

ただし、立替え払い型後払い決済サービスを利用する場合にはEC事業者にて初期費用や月額料金が別途に発生することがほとんどですので注意が必要です。
EC事業者は、後払い決済サービスの契約時において未回収リスクにつきどこまで保証されるのかをよく確認しておきましょう。

サービス利用料金の支払い

後払い決済サービスの利用には、利用料金がかかります。決済機関にもよりますが、サービス利用料金には初期費用、月額費用、サービス手数料、請求書発行手数料などがかかるのが一般的です。また、キャンセルや返品時の諸費用が企業負担になるケースもあります。

利用料金やキャンセル・返品時の対応については、事前によく確認しておくことが大切です。

購入者が後払い決済を利用するメリット・デメリット

後払い決済サービスは、購入者にとってもメリットがある支払い方法です。また、以下のようなデメリットもありますので、十分注意しておく必要があります。
ここからは、後払い決済サービス利用における購入者にとってのメリット・デメリットについて解説していきます。

メリット

まずは、後払い決済サービス利用による購入者のメリットを3つ確認していきましょう。

クレジットカードなしでも買い物ができる

商品の購入希望者の中には、クレジットカードを所有していない人もいるでしょう。その場合、ECサイトで対応している支払い方法がクレジット決済のみであれば、商品を購入することができません。
しかし、支払い方法として後払い決済を選ぶことができれば、クレジットカードを持っていなくても買い物が可能。「クレジットカードを持っていないから」と商品の購入を諦める必要はなくなります。

安全で手軽に買い物ができる

後払い決済の場合、代金を支払う前に、購入者の元に商品が届きます。そのため、実物を見てから代金を支払うことができる点で、安全性は向上。「代金を先に支払って商品が届かない」というような詐欺に遭うこともありません。
また、カード情報の入力不要で手軽に買い物を楽しめる点も、購入者にとってのメリットです。

手元に現金がなくても買い物ができる

後払い決済では、代金の支払いまでに猶予があります。よって、ECサイトでの商品購入時に手元の現金がなくても、支払い期日までに代金の用意ができれば、買い物をすることができます。
この仕組みについては、「給料日前や金欠時に助かる!」という方も多いのではないでしょうか。

手元に現金がなくても買い物ができるのは後払い決済の大きな魅力。ただし、使いすぎには注意する必要があります。

デメリット

後払い決済サービスの利用において、購入者側にとっては以下の2つのデメリットがあります。

支払い能力を超えた購入に注意

後払い決済サービスにおいては、利用限度額はクレジットカードほど高くはありませんが、1カ月あたり一定の与信額(利用できる金額の枠)があります。
また、与信額は決済機関ごとに異なっていますので、複数のEC事業者で後払い決済サービスを利用した場合、気付かないうちに自分の支払い能力を超えた買い物をしてしまうリスクがありますので注意が必要です。

購入代金の支払い期限についても忘れないように注意すること。故意であれ過失であれ未払いが続くと法的措置が取られたり信用情報機関に登録されたりする可能性があります。
後払い決済サービスを利用するなら、支払いは指定期日までに必ず行い、計画性をもって買い物を行うことが大切です。特に中学生や高校生など未成年者が親に無断でEC決済をした結果「高額すぎて払えない」というトラブルが国民生活センターに多く寄せられていますので注意してください。

契約内容が分かりにくいサービスに注意

「商品は無料で送料は100円、いつでも解約できる」との広告をみてECサイト上でサプリメントを定期購入したけれど、サプリが身体に合わないのでキャンセルしようとしたら、EC事業者から「10日後に4カ月分が届く契約になっており、4か月分の代金4万円を支払わないと解約できない」と言われたなど、契約内容が分かりにくいとしてEC事業者とトラブルになるケースが少なくありません。

「数カ月の購入が条件との表示が分かりにくく、お試しの1回だけだと思い注文してしまった」、「キャンセルしようとしたがEC事業者と連絡が取れない」、「決済機関に連絡したら、クレームやキャンセルは対応しないのでEC事業者と直接やり取りするようにと言われた」などの支払いを巡るトラブルも多く発生しています。
後払い決済サービスは便利な反面、安易に利用しがちなので、商品の契約内容については事前に自分でしっかりチェックするようにしましょう。

後払い決済サービスを選ぶ際のポイント

後払い決済サービスを提供する決済機関は多く、決済機関によって利用条件は異なります。EC事業者としては導入するサービスを選定する際には、以下のポイントに着目し、条件を精査・比較するようにしてください。

①利用料金

後払い決済サービスを導入した場合、決済機関に支払う利用料金が発生します。月額料金や決済手数料がその主な内訳になりますが、サービスによって金額や内訳は異なるので、事前によく確認しておきましょう。

②与信枠の上限額

後払い決済における与信枠とは、顧客が後払いに利用できる上限金額のこと。後払い決済サービスによって、与信枠の上限額は異なります。
後払い決済サービスを選ぶ時には、自社で取り扱う商品の価格を踏まえ、与信枠の上限もチェックしておきましょう。

③未払い保証の有無

後払いで未払いが発生した場合、多くの後払い決済サービスでは、決済機関がその損失を立て替えることになっています。これを未払い保証と言います。
未払い保証がないと後払い決済サービスを導入するEC事業者はリスクを負うことになってしまうので、必ず未払い保証のあるサービスを選ぶようにしてください。

④入金サイクル

後払い決済サービスの選定では、入金サイクルの確認も大切。売上がいつ会社に入金されるのか把握しておきましょう。
入金サイクルが長い(売上の入金に時間がかかる)場合、会社の運営が回らなくなる場合もあるので、注意が必要です。

⑤返品やキャンセル対応

各後払い決済サービスの返品やキャンセル時の取り扱いについても、事前確認しておきましょう。サービスによっては、返品・キャンセル時の諸費用をEC事業者が支払わなければならないケースもあります。

まとめ

後払い決済サービスの市場規模は、世界的に見て拡大傾向にあります。
後払い決済は、売上や顧客満足度、業務効率の向上に効果的な支払い方法。EC事業を行う企業であれば積極的に導入を検討すべきでしょう。

ただし、後払い決済サービスには利用料金が発生します。サービス導入時には、EC事業者としてはコストや条件をよく確認した上で、自社および顧客のニーズに合ったサービスを選択するようにしてください。
また後払い決済サービスを利用する消費者の側においても、自分の支払い能力に見合った適切な限度の利用に留めることをしっかり心掛けてください。

監修者情報
弁護士法人 永 総合法律事務所 代表弁護士_永滋康 様弁護士法人 永 総合法律事務所 代表弁護士
永 滋康(えい しげやす)

慶應義塾大学法学部法律学科 卒業。2006年 第二東京弁護士会 登録。現在、中小企業法務、不動産取引法務、寺社法務を専門とする弁護士法人永総合法律事務所の代表弁護士。日本弁護士連合会代議員。第二東京弁護士会常議員。日本民事訴訟法学会、司法アクセス学会、財団法人日本法律家協会の各会員。文部科学省再就職コンプライアンスチームメンバー。中小企業庁認定経営革新等支援機関。東京家庭裁判所 家事調停委員。
弁護士法人 永 総合法律事務所HP:https://ei-law.jp/
寺社リーガルディフェンス:https://ei-jishalaw.com/